ハッピーエンドじゃないと ページ30
――先日読破した本の結末が頭から離れない。
二人の間にひっそりと芽生えた特別な感情を成立させるためにそれぞれが孤軍奮闘するけど、結局は別々の道を歩んでいく。その感情が恋だったのかそれとも別の感情だったのか分からない。唯一の救いだったのは、未来の描写が小指の爪先くらいあったこと。
「前にもそんなことあったよね」
「そうだっけ」
「一ヶ月くらい引きずってた」
身分だとか家柄だとか。そんなしがらみに囚われて今を自由に生きられない苦しみは一体どんなものなのだろう。ある程度好きなことを好きなだけやらせてくれて育った私にはあまり想像がつかない。
「Aと翔太もそんな感じだよ」
「……えぇ？ 」
「家族なのに家族として接することが出来なかったりさ」
酒豪はそう言ってまた酒を煽った。
本の主人公たちは結ばれなかったけど、私たちは別にそうじゃない。腐っても渡辺、されど渡辺。どこまで行っても私たちは家族だから。
「俺はそんなに悲観的に捉えないけど」
「これも二人の幸せってこと？ 」
「うん」
まあ結局、一方的だったけど想いは伝わったし、未来があるってことは希望は潰えていないのかもしれない。もしどう足掻いても結ばれなかったら私の心の中では勝手に結ばれたことにしてやる。
そんなの邪道だって言われるんだろうけど。
「それほどお互いの感情が惹かれあったってことでしょ」
「うっ、……最悪結ばれなくてもいいから交流は続いてて欲しい……」
「重症だね」
「心臓を鷲掴みにされてるみたい…」
「佐久間も前にそんなこと言ってたな」
これこそ純愛。この本がドラマ化したら通行人Aでもいいから出たい。それくらい私に深くぶっ刺さった作品だった。
「主人公は誰が似合うかなぁ……」
「ウチから目黒はどう？ 」
「……あの子は大人すぎる」
「ふふ、手厳しい」
目黒くんはちょっと違う。確かに恋愛モノはお似合いなんだけど、ジャンルが違うんだ。あの子はドロっとした恋愛で儚い愛情表現が似合いすぎてる。
「てか目黒くんが主人公だったら私なんて無理じゃん」
「silent出てたのに」
「それはカテゴライズが違うから」
ジャニーズ御用達ってよく言われるけど、みんながみんなそう思ってるわけじゃない。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
