パパはカッコいいと思われたい【安室透/降谷零】

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「あ、かざみだ！」



そう言って駆けて来たのは、頭に黄色い帽子を乗せた上司の娘
私もこんな小さな子供に呼び捨てにされる事は全く想像していなかったが、それはそれで気に入っている

一方の上司はやけに小さく見える赤いランドセルを片肩に背負い、相変わらずいいパパっぷりをしているようで私まで微笑ましい



「パパと写真撮って！あの看板の前！」



小さな両手で渡されたのは"パパ"のスマホ
壁紙はもちろん愛する娘

すぐにまた駆けて戻って行ったAさんは、腕を上げて父親の愛情を求め
それに応えるように降谷さんもその体を持ち上げて、自らの胸の前でこちらを向かせるように抱える

うん、可愛い

あの降谷さんがランドセルを肩に掛けながら、女の子を腕に抱える様子を写真に撮る日が来ると誰が予想しただろうか

恐らくどうせ"何故もっと撮らなかった"とお叱りになる事を想定して、長押しする撮影ボタン
ものすごいスピードで連写されていく画面を見る私まで幸せになっている気がする

...と考えていた間に、画面に写されていたのはAさんがパパの頬にチューする尊い瞬間
そしてすかさず同じ事を仕返す我らが上司

実はよく見る光景
託児所として扱われている本庁に降谷さんが迎えにいらっしゃると、"パパー！"と駆け寄って来る娘に必ずチューをせがむ
そしていつも嬉しそうに、まるで餅のような愛娘の頬に顔を寄せる

最初見た時こそあまりの衝撃に固まったが、今ではその溺愛っぷりが降谷さんに人間味を持たせていて私は非常に好きである

...しかし、Aさんも本日より小学一年生
そろそろ"イヤだ"とパパのチューを拒否してもおかしくはない
そんな事があった日には公安部が機能しないくらいに降谷さんが落ち込んでしまいそうだが...



「撮れた？」

風「はい、たくさん撮れましたよ」

「じゃあ今度はかざみも一緒に撮ろ！パパ撮って！」

降「え、あ、あぁ...」



...みるみる青ざめていく上司の顔に、私まで冷や汗が出る

まさか抱っこはせがまれないですよね？
そんな事したら、おじさんパパに殺されそうです！
絶対にダメですよ？
絶対に

とテレパシーを送る勢いで上司の娘と"帝丹小学校入学式"と書かれた看板まで歩みを進めると、

っ...！

左手に潜り込んで来た小さな手！
これは握ってもいいのか...？
握った方がいいのか...？
数メートル離れた先の上司は怒っていないか？
どうする？
どう



「かざみ、ピースだよ！ピース！」

風「は、はい！ピース！」

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