パパはカッコいいと思われたい【安室透/降谷零】

◆ ページ12

降「先に宿題をやるんだぞ」

「はーい！」



と言いながらもその距離約3m
俺が夕飯を用意する少し先で、テレビをつけながら鉛筆を持つ娘
憧れた景色だ

Aは自分の部屋の新しい机を使いたいと言ったが、残念ながらそれはパパが寂しい
仕事をしてやっと帰って来たのに、ケーキを一緒に買いに行っただけでまた娘と離れるなど御免だ

向かったのは近所の小さなケーキ屋さん
以前から誕生日ケーキなどもあそこで買っている
"可愛い娘さんですね"といつも褒められるから、ついついそれに乗って自慢話をしてしまうが
こんなにも外見が違う親子に何の奇異の眼差しも無く接してくれる点に、俺は案外感謝している

...後に某喫茶店で働き始めてからはケーキすら手作りするようになりこのケーキ屋とは疎遠になるんだがな...



降「分からないところがあったらパパに聞くんだぞ？」

「うん...」



目元が滲みながら玉ねぎを刻む手
返って来た娘の返事はぬるい

何事かと顔を上げると

...巷で人気の某国民的男性アイドルグループのジャニ◯ズ



降「A...？」

「...あ、宿題やってるよ！」



放送されているのはコンサート映像
...嫌な予感がする

まな板に包丁を置き、一度手を洗ってから向かう娘の隣
丁寧にゆっくり膝を曲げ腰を下ろし



降「...好きなのか？」

「うん！カッコいいと思う！」



その言葉に脳内では、漫画であるような"ガーン"と言う効果音が本当に響いた



「あ、あの人！今テレビ映っ

降「ぱ、パパもカッコいいだろ？」



そして、キョトンとする我が娘



降「パパだってあれくらい出来るぞ！...ちょっと待ってろ！」





・





「...パパジャニ◯ズになるの？」

降「...い、いや...そういうわけじゃ...」



部屋の奥から持ってきたギターを"カッコよく"弾けば、歌とダンスが無いと指摘され
ならどの曲がいいのかと聞けば、さっきテレビで流れてた歌が良いと言われた

そんな物覚えてるはずが無いだろ
と内心思いつつも、サビのメロディくらいは全国民が耳にした事あるような物だった為、羞恥を感じながら見よう見まねでやると歌詞が違うと修正が入ったり
振り付けを逆に教えられるという事態に、娘の踊りが可愛過ぎてそれ以外何も入って来なかったり

気付けば俺は、夕飯の準備も放置して一体何をしているのか



降「だから...その...パパの方がカッコいいよな？？パパが一番カッコいいよな？？」

「う、うん...」



6歳の子供に気を遣わせてどうするんだ

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