22 刀剣女士、故郷だよ。伍 〜緩む涙腺〜 ページ26
母親「さあ、どうぞ上がって」
貴方「失礼します」
自分の家だけどね
母親「ちょっとお茶用意してくるから」
貴方「あ、お構いなく」
久々に訪れた生前の自分の家のリビング。同じ場所にテレビがあり、私のトロフィー置き場があり、特に何も変わらない……。ただ、祖母の写真しかなかった仏壇に私の遺影が並んでいた
金メダルとともに嬉しそうに笑っている私。たしか、去年の総体のときに撮った気がする。……懐かしいなあ。
ピンポーン
夏希「失礼しまーす」
夏希はすぐに来た。
さて、夏希ちゃんはどんな反応をする……?
「やっぱり帰る時に会ってるよね?」と言われるかと身構えていたが、夏希の反応は予想の斜め上をいった
彼女は私を見るや否やぽろぽろと涙を零しはじめた
貴方「えっ!?えっ、ゑっ」
待って待ってどうすりゃいい、待って、ねえ、何で?
夏希「やっぱり、どう見ても雪にしか見えないのに……声も仕草も、雪そのものなのに……」
嗚咽をもらしながらそう語る夏希をみて母さんも涙目になる
やっぱり、来るべきじゃなかった
生前とよく似た容姿で、そのままの性格にそのままの声だからこそ、苦しめてしまう。
夏希「貴方は誰なの?なんでそんなにも雪に似てるの?何でこの周辺にいるの?雪じゃないの?ねえ、」
泣きながら夏希が問いかけてくる。夏希の想いが全て押し寄せてくる気がした
「そうだよ、雪だよ」「記憶や性格はそのままで転生したの」っていうことが言えたらどれだけ嬉しいか
伝わってくる夏希の想いと、伝えられない、伝えてはいけない自分の気持ちが複雑に混じって苦しくて涙が出てきた
貴方「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめん、ごめんね……」
ただ謝ることしかできない。どうしたらいいかわからない。夏希が謝罪を求めているわけじゃないのはわかってるけど、どうにもできない
何も伝えられなくて、ずっと泣いて謝っていると、突然祖父が現れた
祖父「そこの嬢ちゃん、ちょっと来てくれ」
そこの嬢ちゃん……って私か
貴方「はっ、はい!」
涙を拭いすぐ立ち上がる
祖父「他人の空似かもしれんが、君に見せたいものがある。ついてきてくれ」
そう言って祖父は優しく笑った
この方向、もしかして……?
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作者名:リムアクア | 作成日時:2019年8月1日 22時