壱ノ弐 家出 ページ6
【昨日を振り替えれば】
「ずいぶん綺麗な方ね!!」
「大和撫子ですね」
女性陣は、写真を見てワイワイと騒ぐ。宇髄なんかはもう、ニヤけた笑いを浮かべ顎に手をやる。冨岡は、怪訝そうに眉を潜めた。
「名前は何ていうんだ」
「おー…、それな」
「Aだ。とても美しいだろう」
「何して怒らせたの?こんな美人!!」
「思い当たることなどないが……」
杏寿郎も腕を組み考える。家出されるほどの出来事はなかった。お気に入りの皿を割ったり、文句をつけたりもしていない。
喧嘩もしていないのに、何か気にさわることでもしたのだろうか。いつも無表情な彼女の考えていることは、読み取りにくい。
もちろん、自分が一番良く分かっている自信はある。あるはずだが、もしかしたら、もしかすると千寿郎の方が分かっているかもだ。
任務で一緒にいる時間が、千寿郎より少ない杏寿郎。弟の方が一緒に過ごす時間は長いし、父を除けばほぼ屋敷には二人だ。
「むう……」
「……ふむ。そのAさんと最後に会った日はいつですか?」
胡蝶が机を叩き、杏寿郎を艶めかしい微笑みで見つめた。決して色仕掛けをしているわけではないが、他人から見ればそう見える。
だが、ここにいるのは柱だ。ましてや杏寿郎の性格を理解し、ここまで妻のことで落ち込む彼の愛の深さはヒシヒシと伝わってくる。
「うむ、昨夜だ。帰宅したからな」
「最後に彼女を見たのは?」
「朝だな、いつも通り玄関口まで送られてAに行ってくる、と額に接吻をした」
「その時のAさんの様子は?」
「変わらなかったな。いつも通りだったと思うが……」
「失踪が判明したのは?」
「先程、お館様から承った資料を書斎に置きに屋敷に戻ったときだ」
「つまり嫁に逃げられることがあったとすれば昨夜か」
「襲ったとかじゃね?」
「やめて下さい。煉獄さんがそんなことするわけがないでしょう」
「いいや、胡蝶。コイツも男だ。人生の一度や二度、褥は共にするだろ」
冷静な分析を告げた冨岡に対し、イヤらしい話題に持っていく宇髄。思わず、胡蝶もそれには抗議をした。
「襲いかけたことはあるな」
「ちょっと、煉獄さん!!何を仰っているの!?」
「案外、煉獄さんは肉食なの!?ロールキャベツ系男子!?それも素敵!!」
煉獄もその話に乗ってしまい、胡蝶の叱責が飛ぶ。そんなところにもキュンとしてしまう甘露寺に冨岡は密かに呆れた。
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時