永久に君と愛し合おう ページ50
【希望を捨てきれなかった結果】
吸おうとした息、吐こうとした息、二つが喉元で力強くぶつかり合う。息が詰まり、喉に鈍い痛みが走る。咳が零れ、肩が激しく動いた。
側に居た誰かの温もりが自身を優しく包み込む。ゆっくりと目を開けると遥か昔から見てきた、彼の心配そうな顔が視界に映った。
同じ寝床で眠っていたのだった。寝起きの頭でぼんやり考える。今日は休日だ。学校に行く必要もない。麗らかな日差しを浴びる。
「大丈夫か、A」
『……えぇ、少しむせただけです』
鍛えられた胸板にそっと顔を埋める。彼は頭の後ろに手を回し、抱き寄せる。自身よりも大切な命がそこに宿っているのだ。
杏寿郎を感じる度に実感する。Aにとっての全ては杏寿郎なのだと。酸素のような存在なのだと。嗚呼、もう二度と失うのは御免だ。
「なら良かった。おはよう」
『おはようございます』
「……ふふ、」
『どうかしましたか。そんな含み笑いをして』
「寝癖がついている」
『……もう、』
「拗ねないでくれ。どんな君でも愛らしいことには変わりないのだから」
『嗚呼、もう』
本当に無自覚だから尚一層、質が悪い。呼吸をするかのように此方が喜び、満たされてしまう言葉を伝えてくる。愛されているのだ。
Aが言葉にするのに勇気がいるのを、簡単にやってしまう。それが杏寿郎の長所ではあるのだが。照れてしまうではないか。
『本当に、貴方という人は』
「ん?」
『いえ、私は幸せ者だなと思って』
「俺もだ」
眩しいほどの笑顔と共に告げられる。ここまで言い切る人間はそうそういないのではないだろうか。また愛が募って重なっていく。
「……嗚呼、そうだ。A」
『はい』
「子供がそろそろ欲しくはないか」
少し照れるように、赤みがある頬ではにかみながら問われる。一体何処からそんな話が来たのだろうか。勿論、子供は欲しいのだが。
『ま、まだ朝です』
「知っている。連休だから仕事の心配はないな。明日は俺が全てやろう」
『きょ、杏寿郎さん』
「A_______」
互いの虹彩が見えるほど近い距離。ほのかに頬が赤く染まっていくのが分かる。杏寿郎の整った顔から全く視線を反らすことが出来ない。
「愛しても良いだろうか」
聞いておいて了承以外は求めていないだろう。熱が籠った瞳に熱く見つめられ、そして。甘く溶けてしまいそうな口付けをされた。
終わり←かつて夫婦であった者達
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時