かつて夫婦であった者達 ページ49
【この日々が終わっても、きっと】
目の前の光景にキメツ学園美術教師である宇髄は唖然とした。一体全体、何がどうなれば、あの暑苦しい男と静かな女が寄り添うのかと。
それは隣で小さく口を開けたまま停止している冨岡も、きっとそう感じているはずである。否、そうでなくては困るのだが。
『杏寿郎さん』
「何だ、A」
『古典の授業で使う資料が、歴史資料準備室の方に紛れているかもしれなくて』
「うむ、成る程。なら一緒に探しに行こう」
本当に本人なのかと疑いたくなるほどに、儚く柔らかな微笑みを浮かべた煉獄。彼女の手を神聖なものでも触るかのように繋ぐ。
あの煉獄が、だ。あの丁寧で大雑把かつ雑で暑苦しく煩い男が。あんな微笑みを浮かべ、流れるように恋人繋ぎをしているのだ。
今まで煩わしそうにしていたAも瞳を一瞬だけ大きくした後、恥ずかしそうに頬を染めながら視線を反らす。だが、手は放さない。
「……なぁ、冨岡」
「……何だ」
「俺は頭でも打ったか?先週、美術室でダイナマイト193個一斉に爆発させた弾みで」
「……」
「おい、何か言えよ」
そんな話をしている内に、幸せそうな雰囲気を撒き散らす二人が職員室から出ていく。というか校内でイチャつくのはどうなのだろう。
「失礼します、一年の雪代縁です。赤い羽募金の件で田中先生に用があって来ました」
漆黒の髪に漆黒の瞳。その肌だけは陶器のように白い。将来が楽しみな幼い美少年こと、Aの弟である縁が職員室に訪れた。
宇髄は光の速さで縁をひっ掴み、自身の机の前に連れてくる。自分はドスンという音を立てながら、椅子に座ると縁の方へ向き直った。
「おい、雪代」
「ちょ、何ですか。マジで俺、田中先生に羽募金の話しに来ただけなんですけど」
「あの二人、何があった」
このままでは安心して授業も出来ない(ほとんどまともな授業はしてないが)と、縁に聞くことにしたのだ。首を傾けた彼は、片眉を上げる。
「姉ちゃんと煉獄先生?」
「おう」
「いや、俺も知らないんですよ。何かいつの間にあんな熟年夫婦みたいなのになってて」
「お前も知らないのかよ」
「もうすぐ籍を入れるみたいなんですけど」
「結婚!?」
「ついこの前、うちの父さんに挨拶しに来ました。……ほんっと信じらんない」
愛しの姉が取られるのが嫌なのだろう。拗ねた顔をした縁が失礼します、というのも聞こえない。宇随はモヤモヤした気分で叫んだ。
「何があったんだよ!!!!!」
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時