【煉獄杏寿郎】俺は君に初恋を捧げる

拾弐ノ参　花が咲いた今日 ページ47

【泡になろうと水になる】


途端、弾けるようにして視界が真っ赤に染まる。ほどけるようにして、始まりの傘の色か。それとも最後の血沫か。視界を埋める。

唇が離れ、そして。涙が溢れて。構わずに抱き締めた。戸惑うような声も、降ってきた雨も。それすらが世界を構成する一部である。

『……っ、杏寿、郎さん』



「A……」



『私、私、私っ……!!どうして今まで』



泣き叫ぶようにして、力を籠めれば。背中越しに強い力と愛を感じた。空は大雨だ。二人の“再開”に感動したかのように。優しい雨。

「すまなかった」



何も言えない。あの日に戻れれば、何れだけ良かったか。上弦の参さえ来なければ、彼女は死ななかったし。自分も弟に会えた。

ちゃんと伝えなくてはならない。これからの事も。今までの事も。彼女はきちんと思い出してくれた。繋がりを大切にしてくれた。

Aが杏寿郎と再開できる繋がりを。杏寿郎がAとの思い出を。お互いを思いやって、こうしてまた生まれて巡り会った。

「ありがとう」



伝えなければ。



「君が居なければ、俺はダメらしい」



「過去の事を忘れてほしい、なんて言わない」



「俺はA、を斬り、殺した」



「恨まれても仕方ない」



「殺してしまっても俺は執着している」



「Aのことを愛おしいと思う」



「もう一度、いや」









＿＿＿＿何度でも。



俺と添い続けてはくれないか?









伝えなければ。



『恨んでません』



『恨むことすら、心にはありません』



『私が望んだ結果ですから』



『私こそ。ごめんなさい』



『貴方に何もかもを背負わせた』



『殺した罪悪感』



『独りにした孤独感』



『強い裂情』



『償わせて下さい』









＿＿＿＿私は何時でも。



貴方の側に。









体温を確かめ合うように。



もう離さないように。



強く強く。



互いを抱き締め合う。



二度と離すものか、と。



永久に愛し合おうと。



赤い糸は結ばれた。









fin

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