弐ノ弐 当主の考え ページ14
【“狂”の原動力】
『“狂”?』
「あえて厭わないほどに極めた正義……、それが今の柱の原動力」
正義には、どれだけの重荷を背負おうと立ち向かわなければならない時に掲げる、大義名分だ。それを掲げて突き進むしかない。
「そして杏寿郎にはその“狂”の正義の先鋒、最も過酷な役割を務めてもらっている」
『……それで?それを話して私には、何を務めさせようとお考えなのですか?』
微笑まれながら、吐息を溢された産屋敷。私には、きっと耐えきれない重荷を背負わせてしまうと、思っているんだろう。
「……鬼を連れた隊員が入隊したんだ」
その言葉に思わず、息を呑んだ。何に?鬼殺隊に?何を連れた?鬼を連れた?何をしたって?入隊した?どうして、何故……?
『鬼を連れた?隊律違反でしょう、何故、野放しにしているのですか』
「竃門炭治郎っていうんだ。その子の妹は二年前に鬼にされてしまった。けれど、妹は二年間の間に人を喰っていない」
『だとしても、これから人を喰うかも……』
「それも証明できないだろう」
言われてみれば、確かにそうだ。その子が人間をこれから喰わないという断言も、喰うという証明も不可能なのだから。
だとしても、杏寿郎は良しとしないだろう。私の家族を殺した鬼を、今でも憎んでいる彼は鬼を連れた人間を隊員として認めない。
『杏寿郎は、認めてくれないでしょうね』
「うん、だからAに杏寿郎を支えてやってほしい。心柱となる人が不可欠になる」
『……でも、私は』
「彼の任務にも、ついていってくれないかな?」
『彼の最大の弱点である私がですか?』
深く頷かれた。確かに、鬼を連れた隊員のことを知ってしまえば精神は不安定になるだろうし、取り乱してしまうかもしれない。
杏寿郎が最も恐れていることは、自分自身が現在の父のようになってしまうことだ。ああなってしまえば、大切な人を守れないから。
「Aは、人を喰わないということを信じてくれるかな?」
『私の弟が、鬼となって今でも生きているのなら。私も同じことをするでしょう。そして、人を喰わないと信じてしまう』
「うん」
『私は炭治郎という子を、信じます』
「ありがとう。どの子も私の大切な子供には変わらないからね」
失礼をした、と娘たちに支えられて屋敷を出ていく。玄関まで送り、その姿が消えるまで眺めていると肩を叩かれた。
「義姉上!!」
「A、ただいま」
『お帰りなさい』
私は二人を微笑んで迎え入れる。夕日が、小さな家族の姿を照らしていた。
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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時