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追憶ノ壱___彼女との出会い ページ2

【それは雨の降る夕方】


母に贈る簪を選びに、街の方まで行っていたら雨が降ってきた。駆けて数分のところに家はあるが、大粒の雫が降ってくる。

風邪を引けば、母や父に迷惑をかけてしまうだろう。仕方なく、其処らの家の軒下でも借りようとこの辺りで一番大きな屋敷の軒下に駆け込んだ。

杏寿郎の知る限り、大きな屋敷だ。自分の家と同じぐらいだろうか。自分の家が大きいことぐらいは分かっていた。

少し濡れた着物の袖を払い、空を見上げる。しばらく止みそうにない。溜め息をついて、ぼんやりと変わらない風景を見つめてた。



数十分、経ったろうか。ギギッ……と板の軋む音がして、この屋敷の門が開いた。使用人とかが出入りする、小さな扉の方から。

慌てて、姿勢を直す。追い払われてしまうだろうか。緊張した(といっても笑顔の)顔立ちで扉を見つめる。

そこから出てきたのは、美しい少女だった。小柄で細い。年齢は、杏寿郎より下か同い年程度。ゆっくりと、出てくる。

長い睫毛を瞬かせ、番傘を開いた。どうやら杏寿郎には気付いていないらしい。高級そうな着物の裾が、地面を引き摺る。

「あっ」



思わず、声を漏らす。彼女の瞳が、こちらを向いた。その瞳に吸い込まれそうになる。見つめ合う形で、お互い固まった。

『……もし』



「お、おう?」



『傘がないのですか』



「あぁ、街から帰る途中に雨に降られてしまってな。君の家の軒下を借りていたんだ。すまん」



『良かったら、傘。貸しましょうか』



そっと足音も立てずに、歩み寄る少女。差していた傘を閉じて、渡してきた。だが、傘を借りるのはおこがましいだろう。

断ろうと口を開いた時、湿った風に乗って、彼女から白梅香の香りがした。すん、と鼻を鳴らして嗅ぐ。安心する香りだ。

「だが」



『良いんです。差し上げますよ』



「いいや、駄目だ。やはり悪い」



『もう遅いですし、夜は鬼が出ます。早く帰った方が、宜しいでしょう』



さも当然のように鬼が出る、と告げる彼女。勿論、杏寿郎も父が炎柱なので知っている。特に違和感は感じなかった。

「……うむ!!それも、そうか。では借りる。必ず、返しに来よう」



『はい…、お待ちしております』



特に違和感は感じなかった。どうして、一般人が鬼の存在を知っているのか、だなんて。

その数日後、鬼殺隊の同期の娘だと紹介されたのが、雪代A。彼女だった。

追憶ノ弐___殲滅→←人物資料



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ユリ(プロフ) - 出来ればでいいんですが、後日談的なものがみたいです (2020年8月26日 18時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - ユリさん» 最後まで読んで下さり、本当にありがとう御座いました。またこの作品に顔を出してもらえると嬉しいです。 (2020年4月7日 21時) (レス) id: 353512f049 (このIDを非表示/違反報告)
ユリ(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後まで感動しっぱなしでした (2020年3月2日 11時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)
セニオリス - アリスさん» 毎度毎度、遅くて申し訳ないです!!最近、スランプ中でして……。どうにか必死に更新をしたいと思います……!! (2020年2月23日 10時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
アリス - 続きがものすごく気になってそわそわして寝られません。更新頑張ってください (2020年2月21日 22時) (レス) id: ba2a71100d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:セニオリス | 作成日時:2019年7月8日 14時

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