標的21 赤の宝石と大切な人 ページ8
トーマ視点
壁に磔にされていた二人の内の一人は、ボクのたった一人の家族だった。
「フラン！」ボクは彼の名を叫びながら、一目散に駆け寄った。
身体を軽く揺すってみるも、フランは意識を失っているらしく反応は無い。
隣を見ると、今まで取り乱す事の無かったファルソも亜麻色の男に呼び掛けていた。
ファルソが懐から正八面体の赤い宝石を取り出した。
『変化(カンビオ)』とボクと同じ詠唱を唱えながら、ファルソが宝石の角に自らの親指を宛てる。
すると宝石に彼の血が滲んだのと同時に、宝石はボクの身長程もあるデスサイズへと形を変えた。
亜麻色の男の四肢を拘束する枷を確認すると、「退け」ファルソはボクを遠ざけてデスサイズを大きく振るった。
しかし 枷はがちん、と云う鈍い音で衝撃を跳ね返し、びくともしなかった。
「無駄です」とチェルベッロの声を届けたスピーカーを、デスサイズを下ろしたファルソが睨み付ける。
｢その枷は特殊な合成金属で出来ている故、破壊する事は出来ません｣
｢なんで此奴を、ティマを巻き込むんだ。
此奴は関係無いだろ｣
｢その理由は先程申し上げた通りです。
九代目の勅命を受けた我々がルール。
従って頂けない場合は、貴方を失格とします｣
『九代目の勅命』と云う免罪符を出され、ファルソは亜麻色の男――ティマの方を向いて舌打ちをした。
どうやらフランとティマは、唯眠らされているだけらしい。
雪男さん曰く、眠っている人間は起きている人間に比べ、身体が酸素不足に気付くのが遅いと云う。
つまり何が言いたいのかと云うと、ボクより先にフランが酸欠状態になると云う事だ。
安定した呼吸を繰り返すフランの髪をそっと撫でる。
この子は絶対に死なせないし、必ず五体満足で此処から出してみせる。
『変化』の呪文を唱え、ボクもペンダントを棍に変えた。
｢何時まで話していても仕方が無い。
始めよう、ファルソ｣
｢ああ。お前はこの俺が倒してやる、一瞬でな｣
眠っている二人から離れ、ボク達は互いに向き合う。
「試合開始」チェルベッロの合図で、ボク達の絶対に負けられない戦争が始まった。
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ゆきな(プロフ) - これからも無理せずに頑張ってください！ (2019年7月2日 18時) (
レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
シロ(プロフ) - 続編おめでとうございます！いつも楽しみにしております！これからもどうぞ無理をしない程度に頑張って下さい。 (2019年4月27日 13時) (レス) id: 1e9e5f7638 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：レイチェル | 作成日時：2019年4月27日 10時
