今日:1 hit、昨日:13 hit、合計:12,779 hit
小｜中｜大
・ ページ10
・
温かいミルクから眠気を誘われ、尚大くんの肩に体重を預ける。
瞼はまだ閉じない。
「なんだ、眠たいなら寝ていいんだよ」
「やだ。まだ、ニュース見てる……」
ニュースはいつの間にか、同級生を刺した高校生の事件から、一家心中の事件へと変わっていた。
父親とみられる男性が、妻とみられる女性と子ども二人を殺害し、その後首を吊って……
動機はリストラによる生活苦ではないかと……
ニュースが伝える事実は、本当だけどデタラメだ。
私たちがいくら事件を解こうとしたところで、真実は本人にしか分からない。
だけどしばしば、私たちは分かったような気になってしまうから。
もし両親のことがニュースになって、他人からこんな風に憶測で語られたらと思うとゾッとした。
他人はすぐに悲劇的な物語を作ろうとする。
何かを察したのか、尚大くんが優しく私の頭を撫でた。
私のより大きくて温かい手のひらが気持ちいい。ずっとこのままならいいのに。
薄れゆく意識の中で見た流れる殺人事件の報道が、私にはどれも愛の形に見えた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 199人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ベルカ | 作成日時：2023年3月21日 0時
