12月、プールサイドに浮かぶ死体［Nao.O］ (ページ21)

今日:37 hit、昨日:13 hit、合計:12,815 hit

・ページ21

・

誰も私を見つけてくれなかった。
私を暗闇の中から救ってくれたのはこの世界でただ1人、尚大くんだけ。

｢約束ね｣

｢約束？｣

遠くから聞こえる人の声。
そんな雑音ももう私の耳には届かない。

水の中は深く、透き通っていて、大好きな彼の青白い顔がよく見えた。

｢うん。死んでもまた、私を見つけてね｣

｢どうせまた、同じ地獄で出会えるよ｣

意識が遠のいていく。

うまれてはじめて、よく眠れそうな予感がする。

明日は日曜日だ。
起きたらまた、尚大くんと手を繋いでお散歩に行こう。次は、綺麗なスズランを買って育てるんだ。

冷たい水の中で瞼を閉じると、あのワンルームで私に微笑みかける尚大くんに会えた。
こたつの中で眠りかけた私の頭を規則的に撫でてくれる優しい手

ああ、まだあの言葉を言っていないのに。

『おやすみなさい』

伝え忘れた言葉は、泡沫に消えた。

・