12月、プールサイドに浮かぶ死体［Nao.O］ (ページ19)

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｢川辺に蹲る小さな女の子を見た時、昔助けられなかった雀のことを思い出したんだ｣

｢……うん｣

｢高校生の時、12月のプールサイドに死にかけの雀が落ちてた。

死のうと思ってたんだ。誰にもバレないように、溶けてなくなりたかった。汚くて冷たくて寒いところで1人きりになりたかった。
誰もいない場所で｣

｢冬のプールなら、確かに誰も来ないね｣

｢でしょ？我ながら名案だと思った。
それで冬休み、学校のプールに忍び込んだんだ。
そしたらそこに、死にかけの雀……いや、今思えばあの雀はもうとっくに死んでたんだろうけど

痩せててボロボロな、俺みたいな雀が落ちてるのを見つけた｣

｢そいつと一緒にプールに飛び込もうと思ったんだけど、よくよく見てみるとプールには氷の膜が張ってて

それに、ものすごく汚かったんだ。
想像してたよりずっと深く濁ってて、怖くなった俺は雀を元の場所に戻して家に帰った｣

｢生きる理由がなくて死のうとしてたけど、死ぬ覚悟もなかったから
結局そのまま、ここまで生きてしまった。

だけど1つだけ、ずっと心残りだったことがあって｣

｢……雀？｣

｢うん。せめて、お墓でも作ってあげればよかった。それが無理でも、何かすべきことがあったんじゃないかって｣

｢それで、私を？｣

｢今思うと、運命だったのかもね。

……もうすぐ、着くよ｣

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