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そうか、私はずっとこの日を待ち望んでいたんだ。
ずっとずっと、この世界を壊したかったんだ。
そして、私と一緒に壊れてくれる人を探し求めていた。
｢……尚大くん｣
｢なあに？｣
｢おかえりなさい｣
いつの間にか、背中から抱き締めるように尚大くんの影が私を覆っていた。
｢ただいま｣
静かだった。
雨粒が地面を叩く音だけが響いていた。
尚大くんが心配そうに、私の真っ赤な手のひらを握る。
｢大丈夫？どこも怪我してない？｣
｢硝子を握った時に、指をちょっとだけ切ったかもしれない｣
｢痛い？｣
｢……痛くないよ。もうどこも｣
部屋にある遺体に気がついていないみたいに平然としていた。
それよりも私の指先のたった1センチの傷を本気で心配している彼は、やっぱりきっとどこか異常で
だけどそんな尚大くんが愛おしかった。
冷たい指先、柔らかい手のひら、優しい瞳。
好き。大好き。
尚大くんとずっと一緒にいられたらいいのに。
永遠にこの幸せが続けばいいのに。
だけどそれが叶わない願いだということは、分かっていた。
｢ねえ｣
｢ん？｣
｢これから、どうしよっか｣
尚大くんがようやく部屋を見回した。
人間だったものに向けられる、侮蔑した眼差し
光輝くんから溢れ出た、生臭い鉄の匂いで充満したこの部屋では、もう到底今までみたいに暮らせそうにはなかった。
｢これから……｣
外が雨で良かった。きっと血の匂いも光輝くんの足跡も全部洗い流してくれる。
尚大くんとの暮らし
この水溶性の夢も、きっと全て溶かしてくれる。
夢からはいつか目覚めることを、私は知っていた。
｢一緒に、死んじゃおっか｣
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作者名：ベルカ | 作成日時：2023年3月21日 0時
