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光輝くんだけが頼りだった。
私をあの地獄から救ってくれるのは光輝くんしかいないと思っていた。だけどいつまで経っても彼が私を迎えに来てくれることはなかった。
勉強と、気持ち悪いことが終わると、彼は私を置いて帰って行く。
その背中が、大好きで大嫌いだった。
｢だって｣
｢だって？｣
｢だって、あの家にいる限り、
お前には俺しかいなかったじゃん｣
｢あのクソみたいな家にいた頃は、俺がAの全てだったでしょ？
世界で、俺のことだけが、好きだったでしょう？｣
懐かしむように、光輝くんが瞼を細めた。
光悦に浸るような、場違いに穏やかな彼の表情に、お腹の底が冷えていくのを感じる。
ああ、最初から
彼も、"そっち側"だったんだ。
気がつくと視界から彼が消えていた。
ゆっくりと辺りを見回すと、床は血の海を作っていて、
その中心に光輝くんはいた。
白かったはずのベゴニアが赤く染まっている。
綺麗な赤色の花びらを見て、ようやく、私は自由になれたんだと思った。
光輝くんの首筋、ぱっくり割れた傷口に落ちていたベゴニアを生てみる。
光輝くんから出た血を吸い上げてますます紅く咲いた花は、何よりも自由で気高く、美しい。
私を虐げ続けてきた両親が死んだ。私を助けるフリをして私を弄び続けてきた彼も死んだ。そして、｢死ね｣｢消えろ｣と言われ続けた私だけが残った。
ああ、今やっと
最高に、生きてるって感じ。
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作者名：ベルカ | 作成日時：2023年3月21日 0時
