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靴が濡れている。
外からしとしとと雨が落ちてくる音が聞こえた。
この瞳は本当に、雨に濡れていたのかもしれない。
｢ちょっと！｣
｢なあ、お前ずっと閉じ込められてるんだろ？
でももう大丈夫だからな。俺が今から連れ出してやる｣
｢ちょっと待って光輝くん、｣
｢あの男が帰ってくる前に早く。行くぞ｣
｢やだ！離して！｣
強く掴まれた腕を勢いよく振り払う。
その拍子に彼の腕が花瓶に触れて、硝子が音を立てて割れた。
破片と水が床に飛び散って、飾っていたベゴニアの花を穢す。
｢なんで、どうしてだよ｣
｢どこにも行きたくない。私はここにいたいの｣
｢ここにいてもお前は幸せになんてなれないよ
だからほら、俺と一緒に行こう？｣
泣きそうな目で訴えかけてくる。だけどその言葉も瞳も涙も、私には全て嘘に見えた。
｢どうしてあの家にいた時は私を助けてくれなかったの？なんで今更連れ戻しに来たの？
私は今やっと幸せなの！尚大くんとずっと一緒にいたい｣
｢洗脳されてんだよお前は！！｣
｢なんで今なの、なんであの地獄からは救ってくれなかったの、どうして私に勉強を教えてくれたの、どうして私の身体を触ったの、ねえ。なんで？｣
なんで？
……なんで、なんで！
あの時、助けてくれなかったくせに。
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作者名：ベルカ | 作成日時：2023年3月21日 0時
