12月、プールサイドに浮かぶ死体［Nao.O］ (ページ14)

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このドアを隔ててすぐ先に、光輝くんがいる。

ドアノブを握り締めたまま、私は立ち尽くしていた。

私は本当にこのドアを開けてしまっていいのだろうか。

光輝くんはどうしてここが分かったんだろう。一体何をしにきたのだろう。
私がこのドアを開けてしまうことで、何かが変わってしまう？

この錆びついたドアノブが、今の生活を壊すトリガーになるかもしれない。

｢A、いるんだろ｣

｢……光輝くん｣

｢早く、開けろよ｣

｢どうして｣

｢あ？｣

｢何しに来たの｣

ドアノブを掴む右手が震える。

こめかみに銃口を突きつけられているような気分だった。

昔の、いつもの
優しい光輝くんからは想像も出来ない程、ドアスコープ越しの彼の目は血走っていた。

｢お前を｣

｢……Aを、助けに来たんだよ｣

明らかに様子がおかしいのに、瞳はどす黒く濡れているのに、声だけが優しかった。
彼のことが怖いのに、雨の中捨てられた子犬を見ているような気分になった。

光輝くんが、可哀想に見えたんだ。

そうやって油断してしまった私が悪かった。

音を立てながら回ったドアノブ
数センチ開けた隙間に指をかけて、光輝くんは無理やりドアをこじ開けて、玄関に身体を滑り込ませた。

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