12月、プールサイドに浮かぶ死体［Nao.O］ (ページ2)

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私を縛る存在がいっぺんにこの世から消えてなくなったことはとても清々しかった。

父を殺して自ら命を絶った母に、感謝すらし始めていた。

初めて‪見た空に、道に、花に、川に。感動して、お腹が空いていることすら忘れて歩き回っているうちに、いつの間にか辺りは闇に包まれていた。

帰り道など分からない。だけど帰りたい場所などない。

川縁に座り込んでいたそんな私に、声をかけてくれたのが尚大くんだった。

「こんな所でどうしたの？寒くないの？」

「寒くないよ」

「そうなんだ。でも、こんな所にこんな暗い中、女の子1人だと危ないよ」

「どうして？」

そう尋ねた私に、彼は困り顔で微笑む。

いつの間にか触れられた手が冷たかったけれど、そんなことよりも、彼の瞳の黒さに囚われて、私は身動きが取れなかった。

「よかったら、俺ん家、来る？」

それが、私と尚大くんとの出会いだった。

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