おはよう、今日も好きです。《赤》

#20 お前のことが、好きや。 ページ20

重岡 side






『本当の重岡は、どれ？』

「っ、」





そんな泣きそうな顔せんとって。

俺は、そばにいてほしいんや。
ただ彼女がそばにいてくれたらそれでいい。





「好きや」

『へ？』

「突き放して、ごめん」

「でもそれでも一緒にいたい。
俺のそばにずっとずっとおってほしい」





自分でも訳が分からない。
好き？俺がAを？…どういうことや。

でも不思議なことに、「好き」だと言った後、今まで苦しかった胸に違和感はなにもなかった。



ああ、そうか。


やっと分かった。
彼女が強がってでも笑ってた理由。

好きで、離れたくなくて、少しでもそばにいてほしかったからだ。



同じや。好きなんや。





「好き。Aのことが、好きや」





確かめるように、何度も伝える。


今なら分かる。

答えてもらえないことのもどかしさが、突き放されることの苦しさが。





『どうせまた、嘘だ』

「ほんまやって」

『だ、って、』

「あーもうまた泣く！」





へなへなと座り込んだ彼女を、正面からぎゅっと抱きしめる。


彼女の涙でワイシャツが濡れていくのを感じて胸が掴まれたかのように苦しくなる。


どれだけのつらい思いをさせたんだろう。
どれだけ好きだと思っていてくれたんだろう。

どれだけ、俺を待っていてくれたんだろう。





「待たせて、ごめん。
俺のそばにおってくれる？」


『待たせすぎだ、ばかっ』





そう言って服の裾をぎゅっと握れば、ゆっくりと顔を上げる。


思ったより近い距離に、段々と鼓動が速くなっていく。

これは、俺だけ？





『本当に…彼女になってもいいの？』

「俺の彼女はダメなん？」

『…ダメじゃ、ない』





ふにゃりと笑って、今度は彼女から抱きついてくる。


小さな体からも、俺と同じくらいの速さの鼓動が伝わってきて。

一緒なんや、って嬉しくなる。



好きになってもらえるのって、こんなに幸せなんや。





『重岡、私』

「大毅」

『え？』

「大毅って、呼んでほしい」

『じゃあAって呼んでよ。
私も、だ、大毅って呼ぶから』

「…やっば」

『え、なんかした？私』

「なんもしてへん」

『…変なの』





キュンとした、なんて言えない。

初めて呼ばれた自分の名前に、これでもかってほど、心臓が飛び跳ねた。


こんな感覚、初めてや。





「好きやで、A」

『え、ええ！！』





これからもずっと、一緒にいてな。

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