プロ野球と短いお話

（仮）になんてあげません De8 ページ21

「A!!」
「......遅い」
「ごめんって。」

知ってるよ、わざわざ待っててくれたんだろ？こんな風も強くて、日も暮れてきてる中で何時間も。俺の為に。それだけで優越感を感じてるんだから、俺は相当かもしれない。

「...まさか、見に来てくれてるとは思わなかった。」
「だって、お母さんが、折角なら見に行ったらって言うから。」

ありがとう、おばさん!!今度、お礼言いに行きます!!

「...上手くなってた。あんなに守備上手だったんだね。」
「それはまぁ、練習したから。」
「そっか。...グラウンドにいる和毅見てたらね、すごい遠くに居た気がしたの。でも、今は近くにいるね。」

待って待って、待てってば。なんで唐突に可愛いこと言うんだよ。はー、心臓ばくばくいってる。

「何時でも近くにいるよ。」
「うそ。だって東京行っちゃったじゃん。」
「心？」
「そんな、あやふや、信じられない。...東京は楽しかったでしょ？」
「東京は凄かった。俺より上手い人ゴロゴロいるし。刺激も貰ったし、充実してた。...でも、Aがいるって思ったから何時だって頑張れてた。」

よっしゃ、言った、言ったぞ俺！
もう知らねぇ、悪いな、Aの彼氏(仮)!!告白くらいさせてくれ！俺の一世一代の、長年の、恋心に決着くらい着けても良いだろ!!

「何言ってんの、そんな、冗談みたいな」
「本当だよ。だって俺、Aのことが好きだもん。小学校の時も中学校の時も高校の時も、離れて過ごしてるあいだもずっっとAの事しか見えてない。」

「だから、俺と付き合ってください。Aにふさわしい男になったら言おうと思ってた。だから今まで会わなかった。でも、駄目だ。会ったらだめだ。お前の事見たら、堪えきれなかった。Aが他の人と付き合ってるのなんて嫌だ。...俺と付き合って。」

＊

目の前が真っ白になる。
和毅が、私の事を、好き？
まさか、和毅には可愛い可愛い美人でスタイルも良くて気がきいて優しい彼女(仮)がいるんだから。

「嘘？冗談？罰ゲーム？」
「はぁ？お前、そんなんで俺の告白断るつもりなの？」
「違...でも、ほんとじゃないでしよ。」
「本当だよ、本気も本気。なんなら陸か姉さんにでも聞いてみろって。...本気だよ。好きなんだ、Aが。」

あぁ、今日はなんて日だ。
素敵な日だ。

...答えなんて産まれた時からひとつしかないじゃない。

「私の方が好きだから!!」

ずっとずっと好きだったんだ！彼女(仮)なんてやらないからね!!

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