誤解が解けた義眼の女子大生が東都水族館に行く話。【純黒の悪夢】

真っ白　女性side ページ15

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　「あの、これどうぞ」




　「え？」





　私の隣に座っていた彼女───────確か、子ども達に結衣お姉さんと呼ばれていた。





　結衣さんが私に差し出したものは、イルカのキーホルダーだった。





　子ども達のものと形は似ているが、色は付いておらず真っ白。





　取り敢えずそれを受け取る。






　「ダーツのお店の人がくれたんです。好きな色を塗って、楽しんでくださいって」





　「あ、ありがとう」




　「何色に塗るか、決めてます？」




　「いいえ、あの……貴方は何色が良いと思うの？」





　「私に聞くんですか？ そうですね……白、ですかね。個人的には」






　白？





　自分にそんな色が似合うと思っていなかったので、少し驚いた。





　彼女にもそれが伝わったのか、微笑みながらつけ加える。






　「最初に貴方のこと見たとき『真っ白だな』って思ったんです。





　ほんとに直感で、根拠とかないんですけど。





　無垢……っていうか、そんな気がして」






　すみません、失礼ですよね。




　結衣さんが顔を伏せる。





　その、夜の海のような深い蒼の瞳には、どこか暗い影が宿っていた。





　もう私は、白(それ)にはなれない。とでも言うように。





　しかしその陰りは一瞬で消え去り、彼女は勢いよくベンチから立つ。






　「すみません、少し席外しますね。友人に電話をかけてくるので。」






　慌ただしく小走りに行ってしまった結衣さん。





　手の中には、彼女が『似合う』と言ってくれた、真っ白なイルカのキーホルダーだけが残った。







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