鬼人族のヒーローアカデミア (ページ6)

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続ページ6

微妙に噛み合わない会話に、紫音は右の親指で眉間をおさえると、ふーっと息を吐く。

「わかった、じゃ、また今度ね」

「ああ」

離れる轟と元々ハイライトがなく死んでいる目が、いっそう濁る紫音。そのやり取りを見ていた生徒は思った。

「「「(意外に、話しやすい……！？)」」」

気を引き締めて、第4種目の反復横跳び。紫音は膝を曲げて重心を低くすると、スタートの合図で腰から下の下半身のみを動かす。まったくブレない上半身に、一同は簡単の息を漏らす。
線は超えず踏むだけを意識し、記録は〈115回〉。

中学の時は92回なので、なかなかに伸びたといえる。

「(腰痛い……)」

第5種目:ボール投げ

紫音はボールを片手に持ちながら回転させ、フィットする場所を見つけると、円の中に入る。
そして軽くステップを踏むように勢いをつけると、腕を大きく振りかぶってボールを投げた。

肩が外れるんじゃないかと錯覚するほど、ボールは勢いよく飛ぶ。紫音は左手で右肩を押さえると、右肩をグルグルと回した。

〈182.6m〉。中学の時は、82mだった。周りから見れば、緑谷と同じく個性を使わずに種目を受けているようにも見える。

「鬼人族は身体能力が高い」とは言われるが、実際どのくらい高いのかは個人差があるし、実際に見て見なければ分からない。
サイドキックの鬼人族も、警察の鬼人族も、活動しているのはテレビから外れた裏方で、大勢の前には姿を表さず、主に夜間に活動している。

そのため、鬼人族がどれほど強いのかは、闇に包まれているのだ。生徒たちには分からなかった。紫音の基礎の身体能力が高いのか、はたまた個性である「鬼」の身体能力が高いのか。

「(次は、個性を使っていない、緑谷か……)見ものだな」

紫音は小さく呟くと、緑谷をちらりと見た。

「緑谷くんは、このままだとマズイぞ……？」

「ったりめーだ。無個性のザコだぞ！」

「無個性！？彼が入試時に何を成したか知らんのか！？」

「は？」

緑谷は思いつめられているのか、紫音が見ている事にを、自分の話をされている事も気にも止めずにボールを見る。そして、決心したように顔を上げると、ボールを握る手に力を込めた。

右腕が光り、血管が赤い筋として浮かび上がる。緑谷は大きく振りかぶると、ボールを投げた……が、手応えを感じない。

記録は〈46m〉。ボールは虚しく地に落ちた。

「な……今確かに使おうって……」

「個性を消した」

「(……は？)」