06.放課後の話 ページ8
午後の授業も滞りなく終わった。いっそ不気味なくらい、朝の一件以降何もしてこない彼ら。このまま何もなければ良いけど、どうにも嵐の前の静けさのようで不安だった。だから、ホームルームが終わったらすぐに帰るつもりだったんだけど……。
カチッと音がして、紙の束がまた一つできる。
｢なんで私がこんなことを……｣
プリントはまだまだある。こんなのクラス委員の仕事だろうに、何でも委員会の集まりがあるらしく、委員会も部活もやっていない私に役が回ってきた。仕方ないとはいえ、どうせ先生も私なら断らないと思って頼んだところもあるだろう。
半分まで作り終えたところで、おかしなことに気づいた。私はページ順にまとめて、右上にホッチキスをしている。でもこうすると、両面刷りだから裏返した方が逆さまになってしまうじゃないか。
｢先生の作成ミス？｣
これ、言いにいった方がいいよね。一つ持って、教室から出ようとしたら目の前を一人の生徒が通った。その子も、私と同じプリントを手に持っているけど、その形状は"本型"。サァッと血の気が引いていく。
手元のそれは、どうやら本型にする必要があったらしい。振り返って、机の上の束を見る。半分以上ができているが、それは本型ではない。つまりこれは、先生のミスじゃなくて、
｢ど、どうしよう｣
今からホッチキスを全部外して、もう一度作り直したら下校時刻に間に合わない。でも、明日使うのに完成品を渡せなかったら、先生になんて言われるか。こんな簡単なこともできないのかと崩れ落ちそうになった。なんなら泣きたい。
慌てても仕方ないと言い聞かせる。とにかく、やれることをしないといけない。席に戻って、ホッチキスの芯を外していく。こまめに時計を確認しては、絶対に間に合わないと絶望的な気分に襲われた。
ようやく全て外し終えたものの、下校時刻まであと20分もない。私一人でどうにかなる量でもないし、先生に頼んで持ち帰らせもらうか。うん、それしかない。
……なんて言われるのか怖くて行きたくなかったけど、こんな簡単な仕事もできなかった私が悪い。
｢ちょっと君｣
立ち上がったと同時に声をかけられた。予想外のことに声が出ないでいると｢聞いてるの｣と不機嫌そうな顔を向けられる。学ランってことは風紀委員だし、下手なことをすると何されるか分からない。
｢ぁ、こ、こんにちは｣
｢もうすぐ下校時刻だけど……それ、間に合うの｣
どもる私を、風紀委員の人が睨んだ。
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まどろみ(プロフ) - 凛さん» ご指摘ありがとうございます！すぐ修正しておきます！ (2019年3月11日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - こんばんは！雲雀さんの口癖は噛みじゃなく咬みですよー (2019年3月11日 22時) (レス) id: 6bfe22f21c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月10日 22時
