36.金vs愛の話 ページ38
喉元を抑えて呼吸を荒くする私に、沢田さんが必死に名前を呼んでくれているのが聞こえる。でも、お母さんとの記憶がどんどん蘇ってきて、多過ぎる酸素に頭が回らなくなってきた。
｢三峰A！……来てたの。なら、アンタは後回しね｣
地面にうずくまっていると、背後からまた何かが破裂するような音が。私はその原理が分かっているのに、でも、体が震えて力が入らない。あの人がお母さんじゃないことは分かっているのに、さっきの言葉が頭から離れなくて。
そんな私の頭を、誰かが優しく撫でた。視界の端に見えた足は
｢私が行くわ。あなた、間違ってるもの｣
ビアンキさん。
M・Mの前に立ち、はっきりと告げた。
｢大事なのは金でなく、愛よ！｣
｢なんなのこの女、ムカつく｣
金と愛、どちらが大切なのか。それは人によるだろう。生きる上で金の方が大事だと言う人もいる。ただ、このM・Mが母と考え方が似ているのだ。口調もどこか似ていて、どうしても連想してしまう。
クラリネットで起こしていた現象の種明かしをするM・M、その高笑いにまたビクッと肩が揺れた。嫌だ、違う、あれはお母さんじゃない。
＿＿アハハハッ！
＿＿ねぇ見てA、綺麗ねぇ
＿＿……男なんて、馬鹿ばっかりよ
＿＿結局愛情なんて、何の意味もない
お母さんが真っ赤な薔薇を踏みつけて笑っているのが恐ろしかった。誰から貰ったのか知らないその花が、母の靴で惨めに壊れていく。愛情なんてという母の顔は、私を見ている。
｢アハハハ！何が愛よ！金に勝るものがあるわけないじゃない｣
お母さんは、お金目当てでお父さんと結婚したと言っていた。なのに、私が生まれて。
｢さぁ、とどめのひと吹きよ｣
あの人はなんで、私を産んだんだろう。
｢うわぁああぁ！｣
M・Mの叫び声に、顔を上げた。そこには、ポイズンクッキングと化したクラリネットを口に含んでいるM・Mが。触れたものを全てポイズンクッキングにするという獄寺くんの解説に目を見開く。
勝った……
｢そんな、馬鹿なぁ｣
｢ビアンキさん、勝ったんだ｣
寝ているリボーンさんを起こさないために、そのために戦っていたなら、そう、まさしくそれは
｢愛の勝利ね｣
｢ビアンキ、やっぱり恐るべし｣
愛と金。どちらが必要かは人によるだろうけど、お金はどれだけ持っていたって、心を満たしてはくれない。お母さんが、そうだったように。お金で好きな物を買ったって、一時的なものでまた欲が湧く。本当の愛は、きっと永遠だ。
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まどろみ(プロフ) - 凛さん» ご指摘ありがとうございます！すぐ修正しておきます！ (2019年3月11日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - こんばんは！雲雀さんの口癖は噛みじゃなく咬みですよー (2019年3月11日 22時) (レス) id: 6bfe22f21c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月10日 22時
