01.朝の話 ページ3
ハッと目が覚める。
嫌な夢を見た、という感覚はあった。でも、その内容まではあまり覚えていない。悪夢を見て飛び起きると、どうしてこんなに心も体も疲れる仕様なんだろう。やたら煩い心臓に圧迫されて、ボーッと天井を見つめながらそう思った。
ただ呆然と、真っ白い天井と吊るされたライトを見ている。体とベッドがのりで貼り付けられたように動かなかった。というか、動きたくなかった。
｢……まだ、水曜｣
そうだ、学校があるんだったと思い出して、まだ水曜日であることに心底気が滅入った。私がどれだけ嫌な夢に魘されようが、憂鬱でベッドに潜ろうが、朝はやってくる。そして、学校に行かなければならない。
背中とベッドがのりで完璧にくっつく前に起き上がった。この"のり"は、今の季節こたつにもよく見られる事象だ。そして、気をつけないとまるで魔法のように動く気力を奪われる。
二階にある私の部屋。出ると廊下が寒くてぶるっと震えた。三月とはいえまだ冷えるし、インスタントの卵スープでも飲もうかな。気分良くそう思っていたのに、ふわっと漂ってきた食欲をそそる匂いにぎょっとする。
＿＿まさか……
廊下の冷たさなんか忘れ、慌てて階段を駆け下りた。リビングの明かりが、ついている。
｢おばあちゃん！｣
ドアを開けると、案の定おばあちゃんが料理をしていた。おばあちゃんは｢おはよう｣なんて呑気に笑っているけれど、私は料理をやめさせるのに必死になっている。続きは私がやるからと言っても聞いてくれない。
｢今日は調子が良いんだよ。ほら、座った座った｣
背中を押されて無理矢理座らされた。出てきた朝食は、味噌汁と卵焼き、大根の煮物という定番和食メニューだ。おばあちゃんのことは心配だけど、せっかく作ってくれたご飯を無下にもできないし……。完食して、きちんと感謝の言葉も伝える。無理はしないでね、と念も押して。
私のおばあちゃんは認知症を患っている。アルツハイマー病だ。医者には、現在の医療で完治させることはできないとハッキリ言われた。でも、進行を遅らせることはできるとも。
顔に出ていたのか、おばあちゃんが｢大丈夫だよ｣と優しい声をかけてくれる。私なんかより、おばあちゃんの方がよっぽど不安なはずなのに。なんだか申し訳なくなって、無理矢理笑顔を作った。おばあちゃんには迷惑かけたくない。
｢じゃあ、いってくるね｣
｢はい。いってらっしゃい｣
自分のことは、自分でなんとかするんだ。
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まどろみ(プロフ) - 凛さん» ご指摘ありがとうございます！すぐ修正しておきます！ (2019年3月11日 22時) (
レス) id: 2cd0a82a72 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - こんばんは！雲雀さんの口癖は噛みじゃなく咬みですよー (2019年3月11日 22時) (レス) id: 6bfe22f21c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まどろみ | 作成日時：2019年3月10日 22時
