445話 ページ32
大きな手がAの手を包み込み、引き金に掛けたまま硬直していた指をゆっくりと離さる。そのままAにゆっくりと腕を下ろさせて、添えられた手は離れていった。
「…………」
その手の持ち主が、自分のすぐ後ろに立っていることはすぐに分かった。そしてそれが誰なのかも。
「……神父さま……」
振り返って、高い背を見上げた。紫色のカソック、首から下げられたロザリオ。厳格な顔をしたグレイ神父が立っていた。
「わたしは……わたしは、この人を、」
「それは、今のお前がするべきことではない」
震えたAの言葉を、グレイ神父は遮ってそう言った。有無を言わさぬような強い口調にAは押し黙る。ただそれだけで、決めたはずの覚悟はどこかへ消えてしまった。
「ザックとレイチェル・ガードナーはどうした？何故お前だけがここにいるのだ」
「二人は……リビングに」
「そうか」
グレイ神父は頷くと、横たわるダニーに背を向けた。そのまま、グレイ神父は何も言わずに部屋を出ていこうとする。
「あっ……」
反射的に待って、と声にもならない声で呼びとめれば、グレイ神父は微かに首を傾げ、Aを顧みる。
「どうした？」
「………違うんです、ごめんなさい」
言いたいことはたくさんあった。聞きたいこともたくさんあった。それでもあらゆる言葉が出てこなくなる。グレイ神父の前ではいつもそうだった。泣き出しそうな顔を伏せたAを見て、グレイ神父は少し顔を顰める。
「場所を変えるとしよう。ついてきなさい」
「えっ……」
顔を上げた時には、もうグレイ神父は部屋を出ていこうとしているところだった。再びAを顧みることはない、揺るがぬ背中が眼前から姿を消す。
Aは呆気に取られてしばし立ち尽くしたが、すぐに神父の後を追って歩き始めた。
ただ、最後にダニーのことを振り返って。その背中が、僅かに動いたように見えることに妙に安堵してしまった。
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リア(プロフ) - ましゅまろぉさん» はじめまして！コメントありがとうございます。検索では結構埋もれてしまっているはずなのに、見つけてくださって光栄です。応援もいただけてとっても励みになります！ご期待に応えられるようがんばっていきますので、これからもよろしくお願いします！( ¨̮ ) (9月29日 1時) (
レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
ましゅまろぉ(プロフ) - 初めまして。コメント失礼しますm(*_ _)mこちらの作品を最近見つけて面白くて思わず一気見していました。これから更新お待ちしています。応援してますꉂ📣 (9月21日 22時) (レス) @page38 id: f13e73b476 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - ミミックさん» コメントありがとうございます！長らくお待たせしました。これほど更新が遅れてしまったのに読みに来てもらい、コメントまで！本当に嬉しいです。応援いただきありがとうございます。できるだけ早く続きをだせるよう頑張るので、また読みに来てくれると嬉しいです！ (9月13日 12時) (レス) id: 7341473d1c (このIDを非表示/違反報告)
ミミック(プロフ) - 更新再開ありがとうございます。リアさんのペースで頑張ってください。応援してます (9月9日 9時) (レス) @page36 id: 552a25aaf1 (このIDを非表示/違反報告)
リア(プロフ) - @高橋_Teretaさん» コメントありがとうございました！ そして大変お待たせしてしまい申し訳ありません。もしまだ更新を待ってくれていて、再び読みにきてくださるのであればそれほど嬉しいことは他にありません。完結までは必ず持っていきますので、良ければまたお願い致します。 (9月9日 3時) (レス) id: 29a124a552 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：リア | 作成日時：2022年8月30日 13時
