Memories of MIMOSA ページ9
それからまた数日して、
やはり昼クローズの後、窓の外に彼を見かけると
ドアを開けて
「いらっしゃいませ。」
微笑み、声をかけた。
ミモザの枝が風に揺れる。
彼は声を出そうとして一瞬躊躇ってから
「あー、ぼく、のめません、コーヒー、
よいかおりだとおもってます。
ごめんなさい。」
ゆっくり紡ぐ言葉。
「大丈夫ですよ、ココアはお好きですか。」
それに瞳がぱっと輝く。
クローズの時間、カウンター越しに話を聞くと
彼は拙いながら必死で話をしてくれた。
この街で逢いたい人がいること。
手段は、待つしか無いこと。
そして自分には期限があること。
ココアを飲みながら人懐こい笑顔を見せる彼を見ていると
もし息子がいたらこんな時間を過ごせていたのかもしれないなと、ふと思った。
「ここで、はたらきたいです。」
急に真剣な表情で頭を下げる彼に
返事は決まっていた。
それから暫くしたある日
どうしようもなく嬉しそうに
彼女の手を引いて店に入って来た彼の姿が嬉しくて今も鮮明に覚えている。
ー やっと逢えた2人に
私は、何か出来ないのだろうか。ー
「テヒョンくん、もうすぐ、ここミモザが開店30周年って知ってる?」
突拍子なく響く明るい声に
はたと我に返る。
「30、はじめてしりました。すごい。」
テヒョン君の声が大きくなる。
「そうなの、すごいのよ〜、だから皆でお祝いしなきゃね!ほら、ジョングクくんのお疲れ様会も一緒に!
ねっ、オーナー。」
そして" ミモザの看板娘 "の明るい声に、
オーナーはこっくりと頷いたのだった。
............................................................................
「みさとさん、
アメリカンコーヒー、いれました。」
その低く穏やかな声に現実に戻る。
「あっ、はいはーい、お、綺麗な色。」
白いカップになみなみと淹れられた
薄い飴色を見つめながらトレイに載せて
その時
からん、からん、
ベージュ色のスーツ姿の女性が入ってきて
纏う空気に不思議と目がとまる。
かと思うと
いつの間にかすぐ背後にジョングクくんがいて
おっと近いぞと立ち止まると
「なにをきかれても、はぐらかしてください。」
耳打ちされる。
耳元で、それはもういい声で。
みさとはいつものトーンで
「いらっしゃいませー。」と言い
いつもの顔でアメリカンコーヒーを運んだ。
.
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おけ(プロフ) - 一気に読みました‼︎面白いです!更新待ってます‼︎ (2022年1月17日 18時) (レス) @page33 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
みたろう(プロフ) - このお話大好きで何度も読み返しています。更新楽しみに待っています。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page33 id: a75885931d (このIDを非表示/違反報告)
みあも(プロフ) - 途中途中泣きながらここまで一気読みしました。切なすぎて苦しいです(; ;)更新楽しみに待ってます!二人が幸せになれますように!! (2021年4月30日 7時) (レス) id: 2123f5cbc8 (このIDを非表示/違反報告)
ララ - 1からここまで、イッキ読みでした!本当に、キュンキュンするだけじゃなくて、お話そのものが綺麗で、大好きです!ラスト更新、ずっと楽しみにしています! (2021年1月31日 11時) (レス) id: 0d04b07c3e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - 素敵なお話にどんどん引き込まれて、1話から一気に読んでしまいました。読めば読むほど2人の未来は?!2人の幸せは?!と気付けば涙腺まで揺さぶられました。ラスト、2人の幸せを願いながら待ってます! (2020年12月9日 6時) (レス) id: 57a24d82e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽるこ | 作成日時:2019年8月25日 16時