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Memories of MIMOSA ページ8

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「テヒョンくーん、コーヒー、お願い出来る?アメリカン、薄めね。」


レジに向かいながら声をかけると、


「はい。アメリカン、うすめ。」


ゆっくり繰り返してから、カウンターに入る姿。


その姿をカウンターからうっとりと見つめる2人組のOL。
最近よく見る顔だ。
まあなんというかお目当が分かりやすい。


からん、


「いらっしゃいませ。」


ベルの音にすぐさま反応するもう1人の彼にも
入ってきた女性陣がはっと息をのんだ。

こちらの彼は臨時のバイトで今週中には韓国に帰ってしまう。


レジを済ませ、再度カウンターの中へ視線を移す。


ひと通りのコーヒーを淹れられるようになった彼は
コーヒーが飲めない。


しかし淹れる姿はとことん美しい。


流れる様な曲線美の横顔を見ながら、
みさとは、つい先週のことを思い返す。



Aちゃんが慌てて帰ったあの日。

ひとり残されたテヒョンくんのこと。







からん、からんっ、


ドアから出て行く彼女を、いつもの彼なら追いかける筈だった。


でも違った。
目の前の飲みかけのコーヒーのカップを見つめたまま動かない。
あまりずっと動かないから、息をしているのか途中本気で心配になった。


テーブルを片付け拭き上げながら様子を伺うと
ゆっくりと瞬きをしたから、ほっとして、次は別の心配が頭をよぎる。



…泣いてる…?



オーナーは何も言わないし、
かちゃかちゃと、カップを重ねる音、みさとの靴を鳴らす音がやけに大きく聞こえる。



こういった状況に耐え兼ね、我慢出来なくなり


「コーヒーはやっぱり苦いかしら?」


近くで声をかける。



瞬間、ぱっと、視線が合って、声をかけた方のみさとが若干びっくりする。


涙は一滴も出ていなかった。


…良かった、泣いてはいなかった。



そう思うとテヒョンくんは、残りのコーヒーをぐぐっと飲んだ。




「にがいです。


おもったより、ずっと。」



その声にオーナーの靴の音が近くで止まる。



「苦くていいんだよ。」



オーナーは目尻の皺を深くして、
あの日を思い返す。



韓国から来た、この青年と
初めて出逢った日。



あの日はまだ肌寒い風が吹いていた。



昼クローズの後、ドアから出ると
びゅう、と風が当たりふいに横を向くと


ツタの絡まる窓から中を覗こうとする、ひとりの青年。



はたと目が合うと、深々とお辞儀をして、足早に去ってしまった。


その彼が、テヒョン君だった。

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おけ(プロフ) - 一気に読みました‼︎面白いです!更新待ってます‼︎ (2022年1月17日 18時) (レス) @page33 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
みたろう(プロフ) - このお話大好きで何度も読み返しています。更新楽しみに待っています。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page33 id: a75885931d (このIDを非表示/違反報告)
みあも(プロフ) - 途中途中泣きながらここまで一気読みしました。切なすぎて苦しいです(; ;)更新楽しみに待ってます!二人が幸せになれますように!! (2021年4月30日 7時) (レス) id: 2123f5cbc8 (このIDを非表示/違反報告)
ララ - 1からここまで、イッキ読みでした!本当に、キュンキュンするだけじゃなくて、お話そのものが綺麗で、大好きです!ラスト更新、ずっと楽しみにしています! (2021年1月31日 11時) (レス) id: 0d04b07c3e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - 素敵なお話にどんどん引き込まれて、1話から一気に読んでしまいました。読めば読むほど2人の未来は?!2人の幸せは?!と気付けば涙腺まで揺さぶられました。ラスト、2人の幸せを願いながら待ってます! (2020年12月9日 6時) (レス) id: 57a24d82e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽるこ | 作成日時:2019年8月25日 16時

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