そらからにじがふってきたから、 ページ33
夜の間だけ雨が降った。
随分涼しくなった朝。
水色の空からこぼれる光。
それをきらきらと反射する地面を歩きながら
Aは秋が来たことを感じていた。
歩く道の先に、
しゃがみこんでいるその人の元へ
半分駆け足で向かう。
「テヒョンくん、おはよう?」
Aは揃って隣にしゃがむ。
「Aちゃん、
おはよー。」
テヒョンくんが小首を傾げて、ふっと笑う。
まるでAが来るのを分かっていたかのように。
昨日聞いたテヒョンくんの話が夢だったみたいだ。
この無垢な笑顔の裏にどれだけの重たいものがのしかかってるんだろうと思うと、苦しくなる。
「何かいた?」
Aの問いかけに、
テヒョンくんは得意げににんまりと笑い、
目の前の水たまりを指差した。
見ると、水たまりが虹色に染まっていた。
そのまま上を見上げると空に薄く虹が出ていた。
「虹が出てたんだ、
水たまりに映ってるの初めて見た、きれい。」
水たまりを眺めながら、以前、一緒に虹色の雲を見たことを思い出す。
" 彩雲"
あれを見たらいいことがあるって…
そこまで思い出して、
「テヒョンくん、私話してなかった。前に見た、虹色の雲、覚えてる?」
Aは話を振る。
「おぼえてます。」
ゆっくりとテヒョンくんが頷く。
「あれを見たらいいことがあるんだって。あの後調べて話そうと思ってて、遅くなりました。」
テヒョンくんは
ありがとう、と言うと
「そらからにじがふってきたから
Aちゃん、デートしよう。」
唐突なお誘い。
不思議な理由付きの。
「つぎのにちようび、できます?」
ふわりとかかる黒髪の間から覗く瞳に
水たまりの光が反射して
あまりに綺麗で困惑する。
こくり、と頷くAに
手が差し伸べられ、一緒に立ち上がった。
「ちゃんと、
にほんで、したかった。」
そう言われて
日本で、デートというデートはしたことが無いことに気付き、
そもそもテヒョンくんと自分は恋人という括りでは無いのかもしれないけれど、ということはもうこの際どうでも良くて
それを今言われたことの意味に
Aは気付いた。
「Aちゃん、」
表情が曇るのを隠せなかったAに
「Aちゃんは、だいじょうぶ。」
テヒョンくんはいつもの笑顔でそう言った。
ほんわりと温かくなる
ずっとここにあってくれるようなそんな笑顔。
なのに
別れの日は、もうすぐそこまで近付いていた。
誰にも止められなかった。
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おけ(プロフ) - 一気に読みました‼︎面白いです!更新待ってます‼︎ (2022年1月17日 18時) (レス) @page33 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
みたろう(プロフ) - このお話大好きで何度も読み返しています。更新楽しみに待っています。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page33 id: a75885931d (このIDを非表示/違反報告)
みあも(プロフ) - 途中途中泣きながらここまで一気読みしました。切なすぎて苦しいです(; ;)更新楽しみに待ってます!二人が幸せになれますように!! (2021年4月30日 7時) (レス) id: 2123f5cbc8 (このIDを非表示/違反報告)
ララ - 1からここまで、イッキ読みでした!本当に、キュンキュンするだけじゃなくて、お話そのものが綺麗で、大好きです!ラスト更新、ずっと楽しみにしています! (2021年1月31日 11時) (レス) id: 0d04b07c3e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - 素敵なお話にどんどん引き込まれて、1話から一気に読んでしまいました。読めば読むほど2人の未来は?!2人の幸せは?!と気付けば涙腺まで揺さぶられました。ラスト、2人の幸せを願いながら待ってます! (2020年12月9日 6時) (レス) id: 57a24d82e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぽるこ | 作成日時:2019年8月25日 16時