ちゃんと別れるために ページ25
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「ここ、空き店舗になってる。」
まだ残る暑さの中、
時折吹き抜ける風の匂いが鼻先を掠める。
Aは隣を歩く栗野さんに声をかける。
学校からのいつもの道。
先週まではあった筈の店、
輸入品を扱っていたインテリアショップがすっかり姿を消していた。
「ほんとですね、どこかに移転したんでしょうか。」
店内に入ったことは無いけれど、外からたまに見えていたまだ若い女性をAは思い出す。
いつもカラフルなスカーフを首に巻いていた。
話したことも無いのに、なんでだろうか少しさみしい。
いつもの景色がなくなることがさみしい。
ジョングクくんが帰国して10日も経つのに
栗野さんもAも彼の話を出してこなかった。
学校で会う栗野さんは変わらない笑顔の彼女のままだったから、Aは何も聞けずにいた。
「Aさん、今日は私もご一緒していいですか？」
肩の上で巻かれた髪が揺れて栗野さんが指差した先。
ミモザに入るといつものベルの音が鳴る。
いつもの香りに包まれて
「いらっしゃいませ。」
いつものあの大好きな声が響く。
奥のテーブルに案内されて、向き合う形で座ると
栗野さんが急にぷっと笑った。
「やっぱりもういないんだなぁって思う自分が可笑しくて。」
それがすぐに誰のことを言ってるのか分かるからAは黙ってしまう。
そして遅れて、このテーブルがあの夜ジョングクくんがいたテーブルだと気付く。
「すぐに話すつもりだったんです。でもなんか、話したら現実になるなぁと思ったら日にちが過ぎちゃいました。」
栗野さんが話しだす中、
ことり、と静かに水のグラスを置く綺麗な手が目に入る。
テヒョンくんが黙ったままこくりと頷くと
最近かけたばかりの緩いパーマの黒髪がふわっと瞳にかかる。
そのままAの目を見つめてからゆっくりとカウンターに戻ってしまった。
オーダーは急がなくていいよ、そう言ってるようにAには見えた。
が、
「今の熱いアイコンタクトは、あれですか、今夜どう？とかですかっ。」
栗野さんが真顔でやや興奮気味に囁く。
「違う違う、違う」
顔の前で手を振ってAは話の続きを聞く態勢に入る。
カウンターの女性が楽しげにテヒョンくんと話す姿が目に入るけれど、
今は栗野さんだ。
「私、あの夜、帰り道2人になった時言ったんです。
最後に思い出が欲しいって。抱いてほしいって。」
Aは飲みかけた水が変なとこに入った。
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おけ(プロフ) - 一気に読みました‼︎面白いです！更新待ってます‼︎ (2022年1月17日 18時) (
レス) @page33 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
みたろう(プロフ) - このお話大好きで何度も読み返しています。更新楽しみに待っています。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page33 id: a75885931d (このIDを非表示/違反報告)
みあも(プロフ) - 途中途中泣きながらここまで一気読みしました。切なすぎて苦しいです(; ;)更新楽しみに待ってます！二人が幸せになれますように！！ (2021年4月30日 7時) (レス) id: 2123f5cbc8 (このIDを非表示/違反報告)
ララ - 1からここまで、イッキ読みでした！本当に、キュンキュンするだけじゃなくて、お話そのものが綺麗で、大好きです！ラスト更新、ずっと楽しみにしています！ (2021年1月31日 11時) (レス) id: 0d04b07c3e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - 素敵なお話にどんどん引き込まれて、1話から一気に読んでしまいました。読めば読むほど2人の未来は？！2人の幸せは？！と気付けば涙腺まで揺さぶられました。ラスト、2人の幸せを願いながら待ってます！ (2020年12月9日 6時) (レス) id: 57a24d82e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぽるこ
| 作成日時：2019年8月25日 16時
