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その言葉にテヒョンくんは黙ったまま。


ジョングクくんの階段を降りる音に紛れるように
Aはその両腕をひょいとすり抜けて

「戻ろうテヒョンくん、」

きっと赤い自らの頰を自覚しつつ足を進める。


そのまま部屋に入ろうとした時
後ろから抱きしめられた。


「おさけのんだけど、よってないです。

ただ、どうしても」



ー いま、したかった。ー



耳元、というよりもう耳に口付けるように言われたかと思うと、

はむっ、

耳を甘噛みされてしまい
固まるAの顔を覗き込んでから

「もどろう、Aちゃん。」

急な笑顔で手を引かれる。


どうしたって敵わない。


部屋に戻って
みさとさんが切り分けてくれていたケーキをひと口運んでから

改めてしみじみとAはそう思う。

恋に落ちる瞬間というものがあるとして
自分は今まで一体何度落ち続けているのだろう。
と思う。

それはもう確信犯かなと感じる位、
すべてにいちいち反応してしまう、
そんな人が存在するなんて考えたこともなかった。


アルコールが入りご機嫌な沢くんと話しながら
グラスを傾ける、
その絵に描いたような横顔に見惚れる。
喉仏が、こくん、と上下するのが目に入り
Aは思わずばっと目を逸らす。


テヒョンくんにはきっといつまでも"慣れない。"


本能でびりびりとそう感じる。


「Aさん、酔いました?」


今日はお団子ではなく下ろして軽く巻いた栗野さんの髪がふわりと香る。
彼女らしい桃のような香りだ。

「大丈夫、あまり飲んでないし。
でも赤い?よね?」

こくこくと頷く栗野さんに


「ちょっとトイレに行こうかな。」


Aはソファに置いてあるバッグから使い込んだポーチを取り出し、部屋を後にする。


1階は今カウンターのダウンライトだけ。
窓際には外から漏れる青い光が差し込んでいた。

奥のトイレへ足を進めようとした筈の
Aの足が止まる。


奥のテーブル席に座ってるその人のシルエットが
外を通り過ぎた車のライトに照らされた。


「ヒョンをまんぞく、させてきました?」


こちらを見ないまま、よく通る声が発せられた。


「いえすぐ部屋に戻りました。」


Aの返答に、鼻で笑う。


「いつもああなんですか?かお、まっか。」


「これはもう仕方無い。

ジョングクくん。…はい、」


歩み寄ってハンカチを差し出す。
Aは動揺していた。


だって、あの、いつも強気な瞳が濡れている。


ジョングクくんが泣いている。



.

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おけ(プロフ) - 一気に読みました‼︎面白いです!更新待ってます‼︎ (2022年1月17日 18時) (レス) @page33 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
みたろう(プロフ) - このお話大好きで何度も読み返しています。更新楽しみに待っています。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page33 id: a75885931d (このIDを非表示/違反報告)
みあも(プロフ) - 途中途中泣きながらここまで一気読みしました。切なすぎて苦しいです(; ;)更新楽しみに待ってます!二人が幸せになれますように!! (2021年4月30日 7時) (レス) id: 2123f5cbc8 (このIDを非表示/違反報告)
ララ - 1からここまで、イッキ読みでした!本当に、キュンキュンするだけじゃなくて、お話そのものが綺麗で、大好きです!ラスト更新、ずっと楽しみにしています! (2021年1月31日 11時) (レス) id: 0d04b07c3e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - 素敵なお話にどんどん引き込まれて、1話から一気に読んでしまいました。読めば読むほど2人の未来は?!2人の幸せは?!と気付けば涙腺まで揺さぶられました。ラスト、2人の幸せを願いながら待ってます! (2020年12月9日 6時) (レス) id: 57a24d82e0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽるこ | 作成日時:2019年8月25日 16時

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