Blood will out. ページ14
駆け足気味で、
黒塗りの四駆の車に乗り込む。
『奥様、もういいのですか？』
運転手がバックミラー越しに尋ねると
" 奥様 "は、ええ、と言ってから
『本当に、ふふ、どきどきしちゃったわ。』
そう胸に手を当て満足そうに息を吐く。
車がエンジン音と共に動き出す。
窓を開け、流れていく街並みを眺める。
ここが息子が好きな、街。
美味しい空気だと感じる。
『なるべく、可能な限り、ゆっくり走れる？』
その声に運転手は笑って頷く。
あの子の、大切な子。
表情豊かな、瞳の澄んだ子だった。
ずっとずっと会いたいと思っていた。
" 社長 "がロンドンに出張中の今を狙って、お忍びで来日。
とっくに全て気付かれてる可能性は高いが、それでいい。
しかし例の店に行っても会えないし、
あのお友達のうさぎ君が見るからに警戒しているし、
望みをかけて駅で待ってみたが
『会ったら情が湧いちゃうな。』
ぽつり呟く。
『ね、やっぱり親子。似てるわよね。テヒョンと。』
身を乗り出し尋ねる姿が危なっかしい。
バックミラー越しにちらりと視線を送る運転手に
『ゆっくり走りますがシートベルトはして下さい。今日は運転手という責務がありますから。』
案の定窘められる。
『本当ね。せっかくたまのお休みだったのに付き合わせちゃった。』
『日本に用がありましたから大丈夫です。
さっきの質問、奥様には、まぁ、お顔のつくりや雰囲気は似てますかね。』
その返答に
カチャカチャとシートベルトを付けながら、首を横に振る。
『父親の方にね、似てるでしょう？』
『あー社長にですか…？どうですかね。』
運転手は考え込む。
『2人して、しなくていい困難を抱えるもの。』
放たれた台詞に
運転手は、そういうことか。と理解する。
『社長の方は、もう既に自分が、困難そのものね。』
そう言って、ふっと切れ長の瞳が細くなり
『色んなとこに網を仕掛けて、あの子の仲間をそれぞれに縛ろうとするなんて、ね。』
ゆっくりと指折り話を続ける。
『従順に従うフリをしながら舌を出す。
のらりくらり上手く立ち回る。
海外飛び回ってなかなか捕まらない。
やんわり拒否する。
そもそも関わろうとしない。
＿＿＿あなたは、どう出るの？長男さん。』
さっきまでころころと笑っていた筈の瞳の奥が光る。
やはり、血は争えない。
『テヒョンの人生は、テヒョンだけのものです。』
" 運転手 "の、ぶれない声が真っ直ぐに響いた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2702人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おけ(プロフ) - 一気に読みました‼︎面白いです！更新待ってます‼︎ (2022年1月17日 18時) (
レス) @page33 id: a8986157d1 (このIDを非表示/違反報告)
みたろう(プロフ) - このお話大好きで何度も読み返しています。更新楽しみに待っています。 (2021年12月19日 2時) (レス) @page33 id: a75885931d (このIDを非表示/違反報告)
みあも(プロフ) - 途中途中泣きながらここまで一気読みしました。切なすぎて苦しいです(; ;)更新楽しみに待ってます！二人が幸せになれますように！！ (2021年4月30日 7時) (レス) id: 2123f5cbc8 (このIDを非表示/違反報告)
ララ - 1からここまで、イッキ読みでした！本当に、キュンキュンするだけじゃなくて、お話そのものが綺麗で、大好きです！ラスト更新、ずっと楽しみにしています！ (2021年1月31日 11時) (レス) id: 0d04b07c3e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - 素敵なお話にどんどん引き込まれて、1話から一気に読んでしまいました。読めば読むほど2人の未来は？！2人の幸せは？！と気付けば涙腺まで揺さぶられました。ラスト、2人の幸せを願いながら待ってます！ (2020年12月9日 6時) (レス) id: 57a24d82e0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぽるこ
| 作成日時：2019年8月25日 16時
