秘密の喫茶店《山風ふるさと》 (ページ35)

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32. 出来ること　S side ページ35

3人が潜入を始めた頃、おれたちも監視を始めた。

おれたちはパソコンを3台使う。
カズが1台を使い、おれは情報収集のために1台。
あと1台は2人でみる監視用。

おれはほとんど調べ終えてるから、変わったことがない限り使いはしない。

でも、カズは違う。

「……オッケー、開いたよ」
『さすがカズちゃん！』

マイクからそう聞こえてくる雅紀の声に、おれは深く同意した。

やっぱりカズは凄い…。

今のカズは、普段の喫茶店で働いているカズではない。

何でも屋《storm》としてのカズの顔をしている。

どこか…遠くに行ってしまったようなそんな感覚を覚える。それはだいたい、カズがこうして任務をしてるとき。

それでも…
これでもまだ、本来の“チカラ“を出していないんだ。

「…翔ちゃん、悪いけど監視しててもらっていい？」

うぉっと！考え事をしていたら、カズが真剣な表情でこっちを見ていた。

「ん。いいよ、けど…どうして？」
「…コンピュータの中に資料があるなら、あの3人には無理。だったら、ここからぼくがアクセスする」
「っ！…出来るのか？」

そう聞くと、困ったように笑いながらこっちをみて言ってきた。

「わかんない。でも…やるだけやるよ」

ま、最悪USBをもらうから。と言ったカズに思わず笑いそうになった。

やっぱり、どれだけ凄くて遠い存在でもカズはカズだった(笑)

『おれたちはどうすればいい？』

潤からそう聞こえ、カズは画面に向き返った。

「…人が来ないか確認しながら、紙の資料を確認してほしい。あと、念のためだけど、逃走ルートの確認も」
『了解』

そう返事が聞こえたと同時にカズの手は忙しなく動き始めた。

目は画面に向けられ真剣そのもの。
手は見てるこっちが疲れるくらいスゴい速さで動き続けている。

「…おれは、おれが出来ることをやるよ」

思わず呟いてから、おれはカズに任された仕事を全うしようと思い、カズの分も監視を始めた。

カズは自分に出来ることを全力でやっている。

まぁ、任務のためなんだから当たり前なんだけども(笑)

だからおれも出来ることを真剣にやるんだ。

「智くん、そっちは大丈夫？」
『うん。今のところ大丈夫…。だけど、ちょっとやばいかもしれない』
『資料を置きに、研究員が近寄ってきた』