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A to A《四》 ページ9

「―――千代助を撃ったのは、貴様だったか」


『仲間が傷つけられれば、他の全員で仇を討つこと。』


ふと、芥川の胸の奥で、言葉が熱を持った。


熱に呼応するように、外套が獣の形を取ってうごめく。凶悪な咆哮とともに、黒髪を握りしめたミミックの死体へ向かっていった。


なぜ、こんなにも、自分は怒りを感じているのだろう。


なぜ、足立一之が傷つけられた事実が、胸を焼くように抉るのだろう。



芥川には何もわからない。






気がつくと、芥川の周りには『人間だった肉塊の山』ができていた。


血液と、脂とが混ざった酷い臭いが鼻をつく。


手の中に包んだ黒髪に そっと鼻を寄せるが、芥川の記憶にある甘いりんごのような香りは感じない。


青白い肌に鮮やかな赤、そして千切れてしまったざんばらの髪。この髪の持ち主だった少年の凄惨な姿を思い出させる。


しかし不思議と、先ほどのような慟哭(どうこく)は感じられない。


芥川は目をつぶっていた。


この黒髪の持ち主がここにいたのなら、血に染まった自分に目を丸くして、黒目を揺らめかせて駆け寄ってくるのだろうか。と思い浮かべてみる。


戦果などではなく、ただ自分の無事を喜び、笑うのだろう。その姿があまりにも鮮明に思い出せたのが、芥川の心を物静かに動かした。


「一度も見舞いに行かぬ、僕のような薄情とは違うな。お前は」


呟いた言葉は酷くかすれ、諦めを帯びていた。


.


芥川龍之介という男は、生来 感情の抑揚に乏しい。


仲間の敵討ちのため、虚空とも思われていたこころ(・・・)に 黒く淀んだ炎が宿るまでは、感情などは遠い存在だった。


以来、感情の多くは負の力に引っ張られるものばかりであった。


たった今、この瞬間も、その得体の知れない衝動に突き動かされている。


しかし芥川には、なぜ黒い炎が胸に宿るのかを理解できない。


ただ、心から身体へ伝播するように、身体中が憤怒の炎に焦がされていくのを、他人事のように傍観していた。



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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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