不断の糸《弐》 ページ47
−−−足立の初恋がエリス嬢?
−−−好みが料理上手の金髪色白?
−−−というか、
「手前さっきの話聞いてた?」
「……逆にお尋ねしますが、僕が聞いていないように見えてたのですか」
「そういうことじゃねえよ。いやッ……大分ショッキングなことじゃないのか、今の」
「はぁ、」
はぁ?!
思わず中也まで目を三角に釣り上げて怒鳴りかえしたが、芥川は真顔で困ったような表情を浮かべている。
「中也さん。僕もマフィアの屑野郎です」
「―――――。」
「大変云い難いのですが……強いて言うなら貴方も、」
「まあそうだけどな!!! 知ってるよそんなこと!!」
「結局は太宰さんよりは阿呆でしょうし、中也さんにも一生喧嘩で勝てず、挙句 僕にも敵わぬ弱小ポンコツ異能者。 少しばかり器用貧乏に出来るからといっても、所詮はこの程度。わざわざ特務課に売るまでもないでしょう」
―――芥川は、少しも気にしていなかった。今更何ですか、とでも云いた気に小首をかしげた。
「あれがどんな殺人鬼であるかなど。過去でしか在りませぬ」
真顔でのんきなことを言う後輩を殴るための拳は、空中で止まった。
それから震える手を下ろし、意外そうに眼を丸くして、芥川を見た。
今度の沈黙は、絶句ではない。彼の話を聞くためのものだった。
「なぜ首領の命を狙ったのか。誰が千代助を撃ち落したのか。そのような過去は、貴方の言うとおり追うべきものではない」
「……。」
「あれが何を思い、何に拘っているのかなど。千代の師である貴方以上に無知に等しい僕には、とても理解できぬ。例え何を調べ知り得たとしても、判った気になるだけだ。文章だけで何を理解できるというのか」
中也の内心を知ってか知らずが、芥川の物言いは穏やかだった。
「あれは、組織に命を狙われるような真似をしでかした。マフィアに見捨てられるほどの裏切り行為…、貴方すら庇いきれない、大きな過ちを。……千代は それができるほどの能力を、きっと持っていた」
そこまで言うと 芥川は一度中也の目を見、一拍置いてから もう一度口を開いた。
「ですが、これだけは分かります。マフィアを裏切る意味も知って、それでも千代は一歩を踏み出したのです」
マフィアを裏切る意味。その言葉を敢えて選んだ芥川は、既に足立のこれまでの仕事の幾つかを目の当たりにしてきたのだろう。
それらを目の当たりにして尚、芥川の中で、足立への信頼は少しも失われない。
144人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時