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植物園の巣穴にすむ獣《参》 ページ39

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「まあ俺も……無効化の力を持ってる奴と居なきゃ、すっかり記憶なんざねえはずだったんだ。人をとやかく言えることじゃねえ」

「?!」

「昔の話だ。手前と、『この病院』から記憶を根こそぎ奪ったオンナに、俺も太宰も覚えがあるんだよ」


中也はそこまで言うと、鞄の奥から折り畳んだ新聞を取り出し−−とある小さな記事を指差しながら話す。


「ここの病院で昨日、ボヤ騒動があった。これの報道じゃそんだけの事しか書いてねぇ。だが、手前もこれだけは覚えてたんだろ。俺との約束で、この病院まで走って来たってな。見ろ。あの外套に−−−何か着いてるぜ?」


芥川はぼんやりとした、奥底の記憶をつよく意識した。


何かを、思い出さなくては。 昨日何があった。ボヤ騒動があった病院にわざわざ出向き、その病院に入院しているのはなぜだ。


「…これは、」


思考の最中、芥川は差し出された外套を見、眼を見開く。外套の裾についているのは、微かだが、何らかの植物の蔦。いや、棘だ。 植物の棘−−−−。


「薔薇」


中也の、確信のこもった声と芥川の声が重なった。


芥川は、これが薔薇だとすぐにわかるほどに、すぐ近くで見ていた。なぜなら、この薔薇と格闘した(、、、、)のだから。


「−−−−ッ!!」


芥川はすぐに寝台から飛び跳ね、言うことを聞かない身体に鞭を打って病室の外へ這い出た。


確認しなければならないことがある。


中也は何も言わずに、じっと動向を見守っている。


芥川はドアをこじ開けるようにして廊下へ出た。それから壁を伝い、すぐに部屋の外にある札を見つけた。


「……やはり、そうだ」


札に刻まれた病室番号には、覚えがあった。日付を跨いだ、そう遠くない過去に。ここへ足を運び、その患者に会っていた。


−−−そいつを救出するために、そう約束して僕は、とにかく此処へ走ってきた。


「ここは、千代の病室だった場所か」


あの戦いが、ボヤ騒動程度に 病院ごと情報改竄されている。


足立など初めからいなかったように、連れ去られた事実などなくなったように、全て記憶を根こそぎ奪われている。


芥川の名と共に書かれた病室番号が、それを静かに証明していた。


徒花の散る頃《壱》→←植物園の巣穴にすむ獣《弐》



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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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