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おしからざりし命さえ《壱》 ページ11




真っ白い病院のなかを、真っ黒く塗りつぶした少年が歩く。


夜の闇を閉じ込めたような外套を羽織る姿は、大鎌を持っていないのが不思議なほど、死神のような出で立ちをしていた。


―――少年はポートマフィアの禍狗、芥川龍之介。


たった十六歳の少年にして、恐ろしい異名を欲しいままにするマフィアの精鋭。


横浜の湾岸線に並ぶ、ポートマフィア傘下の病院内にすら、彼の名と顔は知れ渡っている。


芥川は、好奇の目を振り払ってこの廊下を歩いている。芥川の感情を読み取り、十分に理解する、数少ない人間——足立一之のもとへ向かっていた。


外来受付はもう終わっているためか、彼の革靴の音が響くほど静かだ。


廊下を歩く看護婦たちは、この時間になってやってくる芥川に咎めるような視線を送るだけで、何も言わない。『心無き狗』。芥川は、自身をそう呼んでいた大人の目つきと何も変わらないと思うだけだった。


無防備に笑いかけてくる相手など、妹を除いたら一人しかいない。


.



「―――良い加減起きろ愚図」


病室に着くなり、芥川はノックもせずに引き戸を開け放った。


白い個室の中心で眠る少年には、命をつなぐ管だけではなく、縛り付けておく以外に目的がわからない、厳重な鎖が首と両腕に絡みついていた。


傭兵集団の襲撃による、三発の弾丸貫通。
それに追い討ちをかけた、刀による割腹。


その様子を、中也が必要最低限の言葉だけで首領に話すのを、芥川は無言で見つめていた。報告の声に抑揚はなく、表情も変わらない。


代わりに、激しく握り締めた拳の震えが、心のうちを多弁に物語っていた。


中也は、全身で泣いていた。その後ろ姿と、何も知らずに眠る足立の姿が重なった。


「…お前は、どこまで莫迦なのか」


声に出しても、心臓モニターのピープ音にまぎれるだけだ。


ふと、足立の髪に顔を寄せてみる。漂白したタオルと薬の臭いがまざって、りんごの香りはしなかった。


昏々と眠り続ける男からは。何の反応もない。


まるで見たこともない他人を見ているようで、違和感に耐えられず、芥川は足早に病室を去った。

おしからざりし命さえ《弐》→←※



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アバンギャルド・マボ(プロフ) - PVの方も見てくださってありがとうございます!!!いつか未来分岐のあるノベルゲーム版を書いていきたいと思っておりますので、その時は是非プレイしてやってください!! 遂行する前から読んでくださってありがとうございます…コメントめちゃくちゃ嬉しかったです… (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 読み込んでくださってありがとうございます(;_;) 台詞に言及してくださるのが嬉しすぎて…。 細かいことは気にしないを地で行く姿が伝わっていることが大変嬉しい!!ずるいぞお前って言いたくなるタイミングで男前を発揮する芥川が表現できててよかった!!! (2019年8月29日 13時) (レス) id: f747016130 (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - あと、PV観ました。何あれすっごいですね!!音楽のセンスと文章ぴったりです!老爺ってまさか……子どもたちってまさか……と思いながら観てました笑。推敲する前から足立シリーズ好きなんですが、もっと好きになりました。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
よしな。(プロフ) - 不断の糸の芥川が好きすぎる。「どんな人生を歩んできたかなんて過去でしかない」って言えるのは君だけだよ……「文章だけで何を理解できる」か。これから大切なのは今であり未来だと言われてるみたいで。だからこのコンビは好きなんだ。 (2019年8月28日 12時) (レス) id: 97ebc294fb (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - わあああいつも有難う御座います!!この作品は初めて自分がシリアスに着手したやつなので、一番好きだといっていただける方がいるのが最高にうれしいです・・・これからもお付き合いください!!! (2019年7月28日 22時) (レス) id: 940de82038 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2016年10月22日 0時

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