蜘蛛の糸、三本目 ページ3
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ぼたり、ぼたり。
雨が降った訳でもないのに、栖(すみか)に水が降りかかる。
ぼたぼた、ぼたり。
これは朝の合図です。
とてもとても乱暴で、1日が始まる最初の出来事。
というよりも、無口な彼からの挨拶。
「巣の上に水をかけるのは辞めなさいと、私は何度も言っています」
こう言っても彼は聞く耳を持ちません。
ことさら何でもなさそうな顔をして、「人間より早起きができぬのか、蜘蛛のくせに」と言い残して去ってゆきます。
「待ちなさい龍之介」
犬に噛まれてから後、(返り血で)血塗れになった彼に駆け寄った、彼の仲間とも思える少年も、同じようなことを言って彼を呼び止めました。
『待て、おい龍之介、腕が!』
龍之介と呼ばれた彼は、四つほど年上に見える少年が血相を変えて走ってくるのを煩そうに振り払うと、
「待たぬ」
ああ、丁度このように。
「待たぬ」の一言で少年の心配を振り切って、目に入った犬を片っ端から殺めて回り始めました。
夜襲に対する報復としては相応しいでしょう。しかしまだ、十二かそこらの少年が行うにしては身に余る所業です。
そんな子供のやることですから、蜘蛛の巣に水をかけて壊してしまうことなど造作もないのでしょう。
むしろ子供らしいイタズラに思えてくるから不思議なものです。
尤も、彼にとっては犬を殺して回ることと大して変わらないのでしょうが。
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伊織 - もう好き...!最後ウルっときましたよ。というか泣いちゃいましたよ。ほんと構成がお上手で...。芥川先生の作品たくさん使ってるの凄い好きです。千代の方も読んでるのですが作者様天才ですね。感動作品をどうもありがとうございます...! (2021年5月22日 18時) (レス) id: 399c3e6058 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - コメントありがとうございます!!初めて書いた女主人公が蜘蛛(雌)ェ……とはいえ、実は人間だった頃が誰なのか、モチーフが居ますので、もしも暇だったら蜘蛛の前世当てクイズに挑戦してみてください笑笑 意外にも多くの方に読んでいただけて嬉しい…(芥川はいいぞ…) (2019年4月2日 11時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
多田野メガネ(プロフ) - どうも多田野です。千代の記以外の、それも女(雌?)主人公が新鮮でした(°▽°)突然の告白ですが、所々に芥川作品要素を垂らしていくマボ様が好きです。 (2019年3月27日 13時) (レス) id: d89d5986ef (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - ありがとうございます!!何も考えずに三時間で書いてみるチャレンジで、殊の外うまく書けたものなので完結させてみることにしました笑笑ギャグシリアス、展開などこれっぽっちも考えず、思いつきで書いております。とても短いお話ですが、最後までお付き合いください! (2019年3月25日 16時) (レス) id: ea18c173c6 (このIDを非表示/違反報告)
柘榴※惰眠愛してる(プロフ) - 新作おめでとうございます! (2019年3月25日 0時) (レス) id: cf0e41908a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アバンギャルド・マボ | 作成日時:2019年3月25日 0時