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『まさかこんな偶然があるなんて！』
『それはおれの言葉だよ！ だって』
だって、の二の句が継げず、ロスティスラーフのペンの動きは止まった。だって。だって、えーと。えーと。
考え込んでいると「貸して」と言うように、向かいの手のひらが彼に向けて開かれた。もとは彼女のペンなので大人しく返す。受け取った彼女は、だって、の続きを封じるように返しの言葉を書く。一字ずつ目で追ううちに、ロスティスラーフはいつの間にか声を出していた。
「『ご―め―ん―ね』いや、謝らないでくれよ！ 何かいろいろ大変だったんだなってことは分かったし！ 生きてるんだって分かっただけで嬉しいから、おれ」
どういうわけだか、彼女はここにいたのだ。紛れもなく彼女は、裏図書館協会に所属していた頃のロスティスラーフの先輩であり、つい最近まで一世を風靡したかと思いきや失踪した唐草日芽だった。
場所は公園の中の東屋に移った。テーブル、そしてその上のノートを挟んで二人は向き合っている。
『死んだとは誰も言ってないんだけどな。でも、あんまりいろんな人には言わないでね。こんなの、ほとんどの人にすれば死んでるのも同然』
ロスティスラーフの発言への返事がまたノートに続いた。
そんなこと言わないでほしい。咄嗟に喉まで上がってきた言葉を、ロスティスラーフは思わず飲み込んでしまった。いま、彼女が開いているノートのページは半分が埋まっている。なぜここにいるのか、と彼が聞いたときの会話も残っている。
『声が出なくなったから』。
それ以上聞くのを拒むような、簡潔な一文だった。
そんなことないよ。そう言おうとした頃には、先程の彼女の言葉の続きに『冗談だよ』と付け加えられていた。さらに、その続きを彼女は綴っている。
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