しろくまのゆうびんやさん【叡智Ⅱ】 (ページ41)

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ゆうびんやさん、おとしものページ41

「またいつでも来てくれよ。俺はいつでも話し相手に飢えているから……あーあ、俺も君のように働けたらね」
「え？！史兄も郵便局に来てくれるのか？」
「ああ、君のように様々な場所へ手紙を届けるのは楽しそうだ。……ま、俺だと届けてる途中に封を切ってしまいそうだけどね」
　それはだめだよー、とロスティスラーフは返した。だから俺には無理だね、と史も笑う。
　その代わり、お喋りにはいっぱい付き合うよ。ロスティスラーフの顔がくしゃりと柔らかくなる。
「あ、八嶋先生も来てくれよな！仕事も、いつでも受け付けてるから」
「は、はい。……書けるくらい自分の中で整理がついたら、ぜひ」
　荷物のトートバッグを、胸の前に抱えて歩きながら朝陽は言った。ぜひごひいきに、とロスティスラーフは笑う。

　そう話している間に出口へ着いた。窓から差し込む西日がまぶしい。
「じゃあね史兄。よかったらゆり姉からの手紙、読んでほしいな」
「それは言われなくても。……ああ、ローシャくん。お喋りにはいつでも付き合ってくれるんだっけ？」
　改めて問われたことに対して、彼は素直に「うん！」と明るい返事をした。
「じゃあ、早速一ついいかな。君の『しろくまのゆうびんやさん』という郵便局、局員は少ない小規模な施設だね。君の同居人も手伝ってくれているようだ」
　うん、とロスティスラーフは素朴な返事をした。

「君にとっては父親といえる存在かな？有名だよ。君の名前を知らない協会幹部はいても、彼の名前を知らない協会幹部は君の入隊当時いなかった」
　ロスティスラーフは、大好きな同僚の顔を思い浮かべる。ずっと好きで、尊敬している相手だ。

「かの有名な第四裏図書館の惨禍の時の昇華隊側の責任者。現役時代には自らも本を焼いていたらしいね。協会の幹部には、彼を非常に恨んでいる者も相当数いる」
　その言葉で、彼の脳裏に浮かんでいた像がぐにゃりと歪んだ。真っ黒で、何も見えなくなる。背中に変な汗が伝う。が、史が話をやめる素振りはない。

「だから、どうにか理由をこじつけてでも法廷に引きずり出されると思っていたのだけれど――命拾いしたよね。政府が文字の秘匿の目的を以って投薬した忘却薬によって、彼は自分が昇華隊にかかわっていたときの記憶を全て失っていた。それにより責任能力なし、となったんだ」
　嫌な汗が全身から噴き出す。それを知らずか、史は呆れたように笑って続ける。動く唇の間から、並びのいい歯が覗いた。