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「文字開放のおかげか、近頃どうして、『文字資料』がたくさん発見されてるんだ。昇華隊もまだまだだったようだね
ちらりと朝陽のほうを見ながら史が言う。ばつが悪そうに朝陽は目をそらす。
「ああ、嫌味じゃないよ。そのおかげで救命できるかもしれないことが多くあるんだから。……過去の『文字』が見つかったときの対応は文字開放前と同じ。政府組織への迅速な報告……なんだけど、最近はどうも多すぎてね。一部を図書館側で預かってるんだ。人は、罪から免れて文字が燃やされる様よりも、罪を蒙って秘匿することを選んだんだ。文字が読めない人間でも。感動的だとは思わないかい？」
白手袋をはめながら史は言った。
「なんてね。先日裏図書館協会と政府が共同で行う『文字史編纂計画』が出たんだ。叡智の門が機能していた時代の、門外の人と文字のかかわりを『歴史』にするための計画だ。この遂行にあたって、門外にある資料の収集が必要になった。それで政府は、有効な資料を提供した人間には謝礼を出すと触れたから、『ウチにも何かないか』と人々が探した結果、意外と出てきただけだろう」
それで、と言いながら史が少し身を引いた。そこから見えるものを、朝陽とロスティスラーフは二人で覗き込む。
「手紙」
ロスティスラーフには仕事柄見覚えがあった。ビニール袋に入った長方形の厚手の紙は、ハガキくらいの大きさだがハガキよりも分厚い。かなり褪せているが、上部中央に何かしらの花があしらわれている。各辺には、かつて箔で縁取られていたのであろうと思わせる、褪せた銀の縁取りが残っていた。
そんな便箋には、端正な字が並んでいる。読めない、ということだけがロスティスラーフには分かった。
「旧言語ですね。ええと……」
朝陽が少し向き合ってみたが、すぐには読み取ることができなかったらしい。すると、史が横からクリアファイルに入った紙を滑らせてきた。
「これが試訳だ。完全に正確とは言えないが、大意は取れていると思うよ」
そこには、A４サイズの紙に、活字の統一語で文字が並んでいた。そこには、次のように書かれている。
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