しろくまのゆうびんやさん【叡智Ⅱ】 (ページ12)

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愛。希望。光。未来。そういうことを歌うのは、そんなものがこの世界にないから。ないことに気づいて、絶望してほしいから？自分自身が歌うたびに痛感して、絶望したいから？だったら歌わなくていい。大きなステージに立たなくていい。こんな手紙書かなくていい。私は、あなたに在ってほしくて歌っていた。
　ないから、じゃない。あってほしいから、歌ったのだ。

『本当に？』
　自分が書いた最後の字を日芽はまじまじと見た。これは誰の言葉だろうか。もしかして――と考えてしまうのは悪い癖だ、とやめる。私はすぐに代弁させてしまう。ヒラクはいつだって私の欲しい言葉をくれたから。私を助けてくれるのは、いつだってヒラクがよかった。
　けれど、もう彼はいないのだ。もう話さないし、手を引いてくれることもない。ずっと、永劫、ない。書いたのは全部私だ。全部私の言葉だ。
　そう思って自分の書いた文章を見ると、猛烈に腹が立ってきた。駄作中の駄作。何が「何度目の春」だ。正確に何度目か言えるくせに。何の目的でごまかしとるん？「いろんなことがつまらなくなるばかり」――何がつまらんのじゃ、言うてみろ、言えんなら黙っとけ。「作りごとを書く」お前が、嘘を、語るな。本当のことなど、何も見たことないのだから。他でもない、ヒラクへの手紙で、そんなつまらんことを書けるスペースなんて一行分もない。
　いつの間にか日芽はペンを脇に置き、便箋の上部を掴み――真っすぐに引き裂いた。

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