しろくまのゆうびんやさん【叡智Ⅱ】 (ページ11)

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十五歳で理解させられたことはなかなか抜けない。提示された正しさに合わせられないのは「間違い」。間違いにはどのような扱いをしても良い。けれど、正しいだけでもいけない。誰もが正しく在り続けられるわけではないから。正しく在れる奴は強い。そう在ることのできない人を存在だけで糾弾できる。でも、正しく在れる奴は少ない。だから、そういう奴には多少文句をつけてもいい。多少傷つけてもいい。正しいんだろう。それくらいで傷つかないだろう。傷ついたって我慢しろよ、恵まれて生まれてきたんだから。
　ない。ない。ない。ない。私たちの生きている世界はいつだって最悪。どう生まれても最悪。どう生きても最悪。ときどき嬉しいことがあっても、それは全部気休め。徹頭徹尾、最後まで。だって、人はどうやったって、死ぬのだ。誰かが望む望まないにかかわらず。理由なんて全部後付けでしかない。
　愛。希望。光。未来。だから歌ったんだった。私たちの生きている世界は、どうやったって美しい。どう生まれても、幸福になるようになっている。ときどき悲しいことがあっても、それでも前を向かなければならない。「最後」なんてかりそめだ。だって、人はどうやったって、誰かの記憶に残る。誰かが望む望まないにかかわらず。どうしてここにいないの。どうして話してくれないの。私たちは、理由を探さずにはいられない。そうしないと、進めないから。歩き始められないから。そういう嘘を、吐いていた。空言を歌っていた。そんなもの、この世界のどこにもない。気づけよ、と。そして同じように絶望しろよ、と。

『本当に？』
　少し迷った末、次の行に彼女はそう書いていた。

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