43 ページ43
・
２人はロンドン市内にあるホテルへ宿泊する事にした。
エレベーターで部屋へと向かう。
「…すまないね、シリウスと一緒に居たから、生憎家が無くてね…」
『ううん、いいの。わがまま言ってごめんね』
Aは部屋に入ると、窓に駆け寄った。
『わ…すごい、ロンドンの夜景…』
ルーピンもAの隣りに立ち、外を眺めた。
「本当だね…こうやってゆっくりと外の景色を見るなんて事…しばらくしていなかった」
ポツリと言う彼を見上げて、Aも頷く。
そして同じ様にポツリと言った。
『…私ね』
ルーピンはAの顔を覗き込んだ。
Aは続けた。
『シリウスが死んでしまった事…まだ実感が湧かないんだ』
ルーピンは黙って聞いている。
『遺体も無いんだよ？…目の前で起きた事なのに、信じられなくて…』
消え入りそうな声で話すAの肩を、ルーピンはそっと抱いた。
「…そうだね…私も同じ気持ちだ。あのシリウスが死ぬなんて、信じられない」
それからしばらく、沈黙が続いた。
ルーピンが口を開いた。
「…A」
名を呼ばれて、彼の顔を見上げた。
ルーピンは何とも複雑な表情をしている。
「…彼の分も、生きよう。彼だけでなく、ジェームズとリリーの分も」
Aもそうだね、と頷く。
頰に涙が伝った。
ルーピンは、その涙を指で掬い取った。
「しかし……君は、やはり元の世界に戻った方がいい」
彼は真顔で続けた。
「君の事を引き留めておいて、こんな事を言うのもあれだが…ここは余りにも危険だ」
Aは首を振った。
『嫌だ…』
「A…」
『また逃げるのは嫌だ。私も力になりたいんだ。足手まといにならない様に、自分の身は自分で護るから…』
Aは涙を浮かべながら、キッと顔を引き締めた。
『…今戻ったら、絶対に一生後悔する』
彼女の決意の固さに、ルーピンは困ったように眉尻を下げ、息を吐いた。
「…わかった。君がそこまで言うのなら、もう止める事はしないよ。私も君の事を守るように…努力しよう」
『…ありがとう、リーマス』
Aは少し微笑んだ。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 195人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
piyo(プロフ) - 絢姫さん» 絢姫様、コメントありがとうございます(^^)とっても嬉しいお言葉…！精進します。これからもよろしくお願いします！ (2019年11月23日 22時) (
レス) id: 1647fc4bda (このIDを非表示/違反報告)
絢姫 - とても面白いです！ 久々に時間を無視して読みました！これからも、応援します！ (2019年11月23日 16時) (レス) id: df8558907b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：piyo | 作成日時：2019年11月16日 22時
