第拾弐話＿羽翼 ページ14
触られた場所がぞわぞわする。触らないでいただきたいが……これは断っていいものなのか？
スリスリと脇腹を撫でている手は少しずつ位置を変える。
え、まって、やめて。
どう考えても手の位置が上がってきている。……気のせいじゃない。
しかしこちらの都合など御構い無しに、手は胸に向かって上がってくる。
……やだ。
気持ち悪い。
身をよじってみるが勿論手は離れてくれない。
やめて、触らないで……
心の中では思うものの恐怖心から上手く声が出せない。
せめてもの抵抗で目を瞑った時だった。
「君、まだそんなところにいたの？」
『！』
「鴎外さんが呼んでたよ、きて」
『……はぃっ』
声をかけてくれたのは春草さんだった。彼は私に向かって手を差し出している。
慌てて返事をして彼の手を取った。
焦っていたので声が裏返ってしまうが彼に気にする様子はなく、帰ってきたのは「いくよ」の一言。
『……ありがとうございます』
「……ああいう時は、助けを求めるべきだと思うよ。あんたは店員でも遊女でもないんだから」
『！』
「ここら辺座ってなよ」
春草さんは自分の隣の座布団をポンポンと叩いた。慌ててその座布団に座ると、彼は満足したのか視線を鴎外さんへと戻す。
どうやら、鴎外さんが呼んでいたというのは、あの場から連れ出すための口実か何かだったようだ。その証拠に鴎外さんにその様子はなく、同年代くらいの男性たちと談笑している。
……助けてもらってしまった。
座布団の上に膝を抱えて蹲る。なんとなく、顔を上げたくなかった。心の中がもやもやして胸がぐっと締め付けられたような感覚。
深く深呼吸をするがなかなか気持ちは収まらない。
……何かお腹に入れて満たす方が気がまぎれるかもしれない。
そう思って、近くにあった料理に手を伸ばしたところで、視界に白いものが写った。うさぎだ。正面に座る男の子の肩に乗っている。
思わずうさぎを見つめると、うさぎもこちらを見つめてきた。
初めはぬいぐるみかと思ったが瞬きもするし、耳も動く。
見れば見るほど本物のうさぎのようで。
この時代ではうさぎを飲食店に同伴させても良いものなのか？というよくわからない疑問が湧き、私は首を傾げた。
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小崎相良(プロフ) - あららさん» コメントありがとうございます！私も芽衣ちゃん好きです！こちらこそ、これからも宜しくお願いします！ (2019年6月30日 20時) (
レス) id: bb37bfea9e (このIDを非表示/違反報告)
あらら - めちゃくちゃ面白いです！めいちゃん好きなんで話に出てきて嬉しいです！これからも更新を楽しみに待ってます！ (2019年6月29日 23時) (レス) id: 3866ce7f97 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：小崎相良 | 作成日時：2019年6月15日 0時
