第56話 ページ9
主人公side
「良かったな!」
ぐりぐりと頭を撫でれば、顔を真っ赤にしてふにゃりと笑う桜乃ちゃん。
少し息を切らして笑っている桜乃ちゃんを会い向かいに座らせ、メニューを目の前に開いた。
「なんでも頼んで良いぜ?」
「えっと、アイスティーで。走ってきたので暑くて」
照れて笑う桜乃ちゃんが可愛くて心臓が止まりかけた。
走ってここまで来るとか、可愛過ぎないか?
もう完璧俺のこと好きじゃない?
だが、桜乃ちゃんは昨日あのレギュラージャージの奴らを見てリョーマって野郎を見つめてたじゃねぇか!
今思い出しても桜乃ちゃんに想われているリョーマって野郎が憎たらしい!
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「そろそろ帰るか」
「そうですね、暗くなってきちゃいました」
桜乃ちゃんに気付かれぬ間に会計を終わらせ、喫茶店を出る。
あたりは既に日が沈み、薄暗い。
バイクのエンジンをかけ、初めて会った時の様に彼女にヘルメットを被せ、抱き上げバイクへ跨がせる。
恥ずかしそうに小さな悲鳴をあげる桜乃ちゃんが可愛くて、思わず笑ってしまう。
「しっかり掴まっとけよ」
「はいぃ!」
ぎゅっと回される腕と、背中にある温もりに少しだけ顔が熱くなる。
桜乃ちゃんが俺に触れているだけで満足している自分がいて、少しだけ笑えた。
俺と桜乃ちゃんの間には会話はなく、バイクを走らせきる風が俺の熱くなった体温を少しだけ冷やす。
『好きだ』
その一言が言えたらどんなに楽になるだろう。
でも、想い人がいる桜乃ちゃんに気持ちを伝えて今のこの関係が終わってしまったら、そんな事を考えてしまうと言葉が出ずに前に進めない。
色んな女と付き合って、経験豊富なくせして変に純情になってしまう自分が情けねぇ。
悶々と考えていると、いつの間にか桜乃ちゃんを降ろす場所まで着いてしまう。
「着いたぜ」
バイクに跨ったまま俺は桜乃ちゃんを降ろしヘルメットを外すと、俺を見上げふにゃりと笑う。
そんな彼女の髪が潤んだ唇に付いてしまっていて俺はスッと指で、髪を払うだけの筈だった。
笑いながら髪付いてんぞって、言う筈だったのに。
彼女の潤んだ唇に吸い寄せられる様に、俺は唇を重ねていた。
柔らかい感触に、やってしまったと慌てて離した唇。
一瞬だけの触れ合うだけのキス。
嫌われる?泣かれる?それとも殴られるか?
そう覚悟した俺の目に映ったのは唇を指で触れ、顔を真っ赤にする桜乃ちゃんだった。
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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時