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第78話 ページ31

主人公side




南にある工場地。

そこは俺がよく知っている場所でもあった。
寂れていて、辺りは人気がない。加えて武器になりそうな鉄パイプが転がっていたり、誰かが持ち込んだソファーやら色んな物が揃っている。

そういや、前に拾った釘バットもあった気がすんな。

喧嘩三昧だった頃、手持ちの金がなかったり、乙女と喧嘩して閉め出された時なんてよく利用したものだ。
埃を被ったソファーに横になって寝苦しかった思い出と、昼寝をしている時にリンチされて逆に病院送りにしてやった思い出なんて、まるで昨日のことのように思い出せる。

他にも、色々。



「……変わってねぇな」


バイクを停めて、睨むようにして見つめるのは、あの頃と変わり映えのない寂れた場所。
昔と同じなら、人気のない静かな場所のはず。しかし、今目の前にしているその場所は、十数台もの見慣れない改造バイクが停められている。

台数を数えるのは億劫になりそうだ。
両手両足の指を足したところで足りなそうなあの台数分の人数か。はたまた、それに+αの人数が中で桜乃ちゃんを囲んで俺を待ち構えているのは容易に想像出来た。


「……泣いてねぇかな」


どんな奴が、西から馬鹿げた計画を横取りしたのか。
そして、俺の可愛い可愛い桜乃ちゃんを、捕まえて怖がらせているんだかは分からねぇ。

どんな野郎であろうと、俺の気を引く為だけに桜乃ちゃんを巻き込んだことに対しては、(はらわた)が煮えくり返って仕方がなかった。


「骨の一本、二本じゃ……足らねぇな」


バイクを飛ばしたことによってぐしゃぐしゃに乱れた髪を掻き上げながら、怒り任せの低い声で呟いた。
ヘルメットもせずにバイクを飛ばした所為で、朝セットをしたはずの髪は、見るも無残な程ぐちゃぐちゃになって乱れてしまっている。

桜乃ちゃんに会うんだから、本当だったらちゃんと決まっている姿で助けに入りたい。
しかし、彼女が怖がっているであろうことを想像すれば、そんなことどうでも良くなった。


見た目なんて関係なしに、きっと彼女は俺がやってきたことで安堵するだろう。

俺が、目の前でどんな表情をしていたとしても。

俺が、目の前でどんなことをしていたとしても。






俺は息を吸い込み、怒鳴り声をあげる。




「てめぇら!覚悟、出来てんだろうなぁ!!」



怒り任せに出した声と共に、俺は工場内へと足を踏み入れた。

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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時

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