第76話 ページ29
主人公side
「ミレイちゃんが隣町のやべー奴と寝て、Aとサクノちゃんの情報流して俺の計画奪われちゃった」
俺に殴られて奥歯が折れたのか、それとも口の中を切ったのか、口からダラダラと血を溢しながらもへらりと笑っている。
まるで罪悪感のない、屈託のない笑みにもっと殴ってやろうかと、腹の底から怒りが迫り上がってきた。
「相手はサクノちゃんには手を出してない、……ハズ。
向こうの目的はあくまでもAだけであって、それも最近喧嘩をしなくなったAと殴り合いたいだけ、んでもってミレイちゃんはAがボコボコにされて欲しいみたい」
痛みを感じていないのか「利害一致ってやつだね」とヘラヘラしている西は、スマホの画面を見てにんまりと笑い直す。
「場所は、最近あいつらの拠点になってる南にある工場地。俺の彼女達はここまで来るみたいだから、さっさと助けに行きなよ」
「戻ってきたら病院送りにしてやるからな」
「怖っ」
もう一度ぶん殴りたかったが、桜乃ちゃんがこの間も怖い思いをしていると思うと早く助けに行きたくて仕方がなかった。
とりあえず吸い殻で溢れている灰皿を思い切り投げつけてから、店を出てバイクに跨る。
時間が惜しくて、ヘルメットも着けずに出せるだけのスピードで桜乃ちゃんがいる場所へと向かった。
信号も歩道も関係ない。一秒でも早く桜乃ちゃんを助けないといけない。そんな気持ちでいっぱいだった。
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桜乃side
「へぇ、東ってロリコンだったんだな」
煙草の煙を吐き出しながら、冷たく笑う人は私の髪をくるくると遊ばせている。
私を連れて来た女の人達は帰ってしまった。……というより逃げていったに近い。逃げる際に「ごめんね」と言われたが、その言葉が置いてかれた私の恐怖を余計に駆り立てた。
女の人達が居なくなってからは、工場内の埃っぽいソファーに座らされて。しかも隣にはこの場所に似合わない制服をキッチリと着て冷たく笑う人が座っている。
Aさんの煙いバニラと違って重たく苦い香りを纏う人は、ガタガタと震える私を見て目を細めていた。
「あの女じゃ振られるわけだな。締まりは悪く無かったが、こんなに純粋で素朴な部分なんて欠片もなかったし」
鼻で笑う様に吐き捨てた言葉に、私は「え?」と小さく声を漏らしてしまう。
そんな私を見て「教えてやろうか?」と煙草を咥えて紫煙を吐き出したその人は、切り揃えられた髪を鬱陶しそうに掻き上げた。
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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時