第73話 ページ26
桜乃side
「えっと、本当にここなんですか?」
案内されたのは、寂れた工場地。
ドラマでよく見る不良の溜まり場や喧嘩場所で使われていそうなその場所に、思わず私はそんな質問していた。
案内してくれた女の人達も少し不安そうに「マリ、本当に此処?」とか「でも西くんからの位置情報は此処って……」とか、小さな声で会話をしている。
「マリ、ミーナ。……あたし此処知ってんだけど、さ」
「キョウカ知ってるの?」
キョウカと呼ばれたフィッシュボーンにしている背の高い女の人が、綺麗に化粧された顔を強張らせて口を開いた。
その瞬間だった。
「んで? 東の弱点ってどれ?」
「知らねぇわ。……まぁオレだったら、真ん中の髪の毛がふわふわした子がいいね」
「んじゃ、俺はショートの子」
「バァカ、メール見てねぇのかよ。書いてあったろ?サクノちゃんって子だって。……なら俺は背の高い子がいいな」
「ああ!あったな、しかも誰にも手ェ出すなってやつだろ!?メンドーな事言いやがってよぉ」
ゲラゲラと笑いながら工場内から出てきたのは、ドラマや漫画でしか見たことのない、制服の中に柄シャツを着ていたり、髪の色が派手だったりと明らかにガラの悪い人達。
その人達が立てるジャラジャラとチェーンが擦れる音や、ライターを付ける音がやけに大きく聞こえた。
「ついこの間から、隣町の不良高の溜まり場になってるとこだよ。頭が代替わりしたとかで」
「うそ、でしょ?だって、西くんと此処で待ち合わせしてて、それに西くんはサクノちゃんにちょっと話があるって……」
「西くん、……わたし達を騙したってこと?」
私の目の前で震えている女の人達は、信じられないと表情を強張らせていた。
「騙してねぇよ。急に変更になっただけ」
そう口を開いたのは、ガラの悪い人達とは違って制服をキッチリと着て流行りのワンレンヘア靡かせ、煙草を咥えている人。
その人は一切表情を変えることなく、髪の隙間から鋭い目付きでこちらを見つめていた。
「待ち合わせ相手が俺達になっただけさ。
まぁ俺達が、頼んで代わっただけだけど。これで最近牙が抜かれた様に大人しくなった東が、本気になってくれるって聞いたからな」
紫煙を吐き出しながら切り揃えられた髪を掻き上げるその人は、涼しげな目元を細めた。
「んで、サクノちゃんは……どれ?」
そう言った男の人の冷たい笑みが、私を捕らえた気がした。
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バンビ(プロフ) - 真理さん» 現在更新のペースがかなりゆっくりになってしまっていますが、時間を見つけて更新をしていきますので、今後ともよろしくお願い致します。 (1月25日 23時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
真理 - バンビさん» 続きまだですか? (1月24日 7時) (レス) id: e1f8464f5a (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - リコさん» ありがとうございます。今後も楽しみにして頂ける様に更新していきます。 (2021年7月18日 11時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
リコ(プロフ) - 続きを楽しみにしてます! (2021年5月9日 6時) (レス) id: 8b5e530447 (このIDを非表示/違反報告)
バンビ(プロフ) - 紗衣さん» ありがとうございます。非常にゆっくりな更新になっていますが、楽しみにして頂ける様に頑張ります。 (2021年4月10日 0時) (レス) id: ff777945fb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:バンビ | 作成日時:2020年9月4日 12時